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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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fainal2/2-2

「何やってんだ……」

 省吾の口が無意識に秋川を罵る。他愛のない正面のゴロ。アウトだと断定したのが、逆にランナーを背負う羽目になった。 締めて掛かるべき場面で見せた失策への苛立ち。もちろん、秋川の耳に届くはずもないが、その冷たい表情が全てを語っている。

「まずいな……」

 一連の様相に不安を覚えた永井は、ベンチから飛び出してタイムを採った。

「佳代。伝令だ、行ってこい!」
「は、はい!」

 初回の、まだひとつのアウトも奪っていない中でのタイムに周囲は驚いた。が、永井には試合を左右しかねない危機であり、立て直しの時間が必要だと感じられた。
 そして、この場面には佳代が適任だとも。
 内野手全員がマウンドに集まる中、佳代が遅れて入っていくと、省吾に詫びを入れる秋川の姿があった。

「すまなかった……せっかくのところを」

 他の野手が「気にするな」とフォローしているのに対し、省吾は俯いたまま地面をスパイクで弄っている──あからさまな怒りの態度。
 このままでは纏まりが無くなり、試合どころではなくなってしまう。

「監督の伝言は──」

 いやな雰囲気の中、佳代は永井の言葉を伝えた。

「省吾。仲間のエラーはカバーする気持ちで投げろって」
「お、俺に対してなのか!?」

 伝令を聞き、省吾は目を丸くした。てっきり守備に関するものだと思ったのが、自分への咎めだったからだ。

「両方だよ。とにかく、みんなで補って凌げって」

 そう言った佳代は、全員に視線を向けると、

「なんたって、わたし達は笑顔で球場を後にするんだから!」

 最後に自分の言葉で締めくくるとベンチに退いた。内野手達もマウンドから散った。

「どんな感触だ?」

 戻った佳代に永井が訊いた。

「最初は怒ってたみたいですけど、監督の伝言で少しは落ち着いたと思います」
「やっぱりそうか」
「あの〜」

 今度は、佳代が永井に訊ねる。

「何故、わたしが伝令だったんですか?こういう場面なら直也の方が……」
「直也は同じ先発だから、素直に利かんだろ。お前が適任なんだ」
「そんなものですか……」

 釈然としない佳代だが永井には確証があった。省吾のナイーブな神経には、ライバル視している直也の助言は逆効果である。その点、佳代はまがりなりにも女の子だ。少しは場を和ませてくれるだろうと。

 ──果たして、その効果は如何なものか。

 試合が再開された。左打席に入った三番バッターは、早くもバントの構えをとっている。沖浜中は、確実に二点目を狙っているようだ。
 サード乾は、定位置よりもかなり前に守備位置を変えた。


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