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『法術士〜洋二郎〜』
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『法術士〜洋二郎〜』-1

「貴方の…貴方の手で殺して下さい…」
仄かに青白く輝く小刀を両手に握り向かい合う私に彼女は言った…その瞳には哀しみと、決意が込められていた…


 古くから続く由緒ある神社の次男として私は産まれた。妖魔退治等を生業とする坂神家の一族として……「何故貴様は真面目に修業せんのだ?兄の修一郎を少しは見習わんか!」
「私には兄のような才能はございません。ですから…」
毎日のように繰り返される父親との会話…正直うんざりする。私には法術を使う才能などないのだ。簡単な術はなんとか会得できたが…兄は私の歳には既に妖魔退治も経験していた。そんな兄と比べられる事も嫌だった…
「父上、私、洋二郎は法術士の道は無理でございます」
土下座をして父の部屋を出ようとしたとき、
「もうよい!お前は勘当とする。二度と坂神の敷居を跨ぐ事許さぬ!」
とうとう言われた言葉…
「今までお世話になりました…」
立ったまま一瞥し玄関へと 続く廊下を歩く
「洋二郎さん!」
呼ぶ声に振り返る
私達の会話を聞いて慌てて母が追い掛けてきた
「母上…」
「洋二郎さん、本気にしなくて良いのよ…あの人は洋二郎さんに修業に励んで貰う為に叱咤しただけなのですから…」
「母上、私ももう大人です。自分の事はわかります。私には才能はないのです。ですから坂神の家を出るのは自分の意志でもあるのです。わかって下さい…」
後悔の無い、まっすぐな目…母が何を言っても洋二郎の決意が揺るがないと知り、少し寂しくもあった…
「では、せめてこれを…」母が私に小刀を差し出す。「坂神家に伝わる霊刀です銘はありませんが必ず助けになるでしょう」
「このような物、頂けません、私は…」
母が私の言葉を遮り小刀を私に握らす
「あの人からのお願いでもあるのです。最後に父と母の気持ちを汲んで下さい」無言で頷き小刀を懐にしまって玄関の前で振り返る。優しげに微笑む母に
「ご息災でっ」
一言だけ叫び私は駆け出した…

あれから一年程過ぎていた。小さな村で長屋の一室を借りていた。そこへお腹を抑えて苦しむ男を抱えながら村人が入ってきた
「先生!ハラが痛いって惣治の奴が…」
「源さん…何度言ったら解るんですか?私は先生じゃありませんよ。」
この村に来た当初、他所者の私をこの源さんが色々としてくれた。村での生活にも次第に慣れてきた私は恩返しのつもりで、医者のいないこの村でちょっとした治療を行っていた。
「じゃあ源さん、惣治さんをソコに寝かせて下さい」横になった惣治の腹部を触っていく…
「食あたりですね。痛みは直に治まるので大丈夫ですよ。後、この薬を飲んでおいて下さい」
多少の怪我や病気なら私の法術で治せる…家を出ても法術と係わるとは…皮肉だなと思いながらも悪い気分ではなく、むしろ充実感があった。
「先生いつも悪いね。助かりましたよ」
先程まで苦しんでたのが嘘のようにニコニコしながら惣治が礼を言うと
「ただの食あたりで死にそうに唸りやがって。先生の手を煩わしやがって」
と、源さんが毒づく…
「良いんですよ、源さん。いつでも誰でも気軽に来て頂いて。村の皆さんには感謝してるんですから。」
本心からそう思っている。ここの人達はなんか温かいのだ。本当の家族と同じ位、村人達は私にとって大切な存在になっていた。
「じゃあ先生ありがとな」「はい、お大事に」
二人を見送り一息ついて物思いに更ける…
その視線の先には母に貰った小刀があった
 それから月日は流れ、桜の華が咲き乱れる季節、洋二郎が村に来てから三年が経っていた。相変わらずの毎日を送っいる村には、ある噂が広まっていた…
   『神隠し』
 誰ともなく囁く村人達。最初、近隣の村で失踪事件が相次いだ。一人、また一人と。それは洋二郎の住むこの村でも起こった。山菜を採りに行った老婆が…狩りに出た男が…何れも一人の時に起き、目撃者はなく、痕跡もなかった。
そこで集会場に村の男達が呼ばれ対策会議を行う事になった。もちろん洋二郎もその中にいた…
「どうすっべ?」
「どうするっても…神隠しを防ぐなんて出来るのか?」
「んな事言っても、こんままじゃ山に入れないし」
この村では生計は山の恵みで成り立っている事が大きいので山に入れないのは深刻な問題であった
「先生…なんか良い考えはないかなあ」
普段が気勢の良い源さんが別人のように消え入りそうな声で聞いてくる。不安が伝わってくる。皆、必死に堪えているのだろう…
洋二郎は意を決し、立ち上がる。
「皆さん、山に入るのは複数人でお願いします。必ず一人にはならないように」皆がわかったと頷く。が、「先生、問題は解決してませんが、何か良い考えでも?」
惣治が尋ねてくる
「これは妖魔の仕業かも知れませんので、多少の知識がある私が調べます」
…反対はあった。特に源さんから。危険だからと。しかし、私が
「大丈夫です。」
と強く言った為、仕方なくだが納得して貰った。


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