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The end of the DragonRaja,
【二次創作 その他小説】

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The end of the DragonRaja, Chapter 1[Life and death]-12

No.5 「havingbeentiedhands」

 城をまっすぐ出てしばらく南下すると、レナス中心部の広場に出る。
 ここは大きな噴水があり、もっとも人が集まる場所だ。
 雨が降っているせいか、普段よりは人がまばらだが。
 あたりの家々の窓は、あたたかな部屋明かりを映し出している。
所々の木々に備え付けられた皿の上に硝子で囲まれた中のろうそくの火は、
 煌々とした光を放ち、あたりを柔らかく包む。
 噴水の南側には、いななく馬の前肢を高らかに跳ね上げさせている騎乗した騎士の像がある。
 噴水から南に進むと廃村のカライル、南西へ進むとレナス外部へと行く事ができる。
 そのレナス外部へ行く途中に、リーフの用事である食材屋がある。
 アランはひとしきり必要な食材を得たリーフに言った。
 荷物を持とうか、などといった気の利いた言葉ではなく。

「そういえば、お前達のギルドは、外部に配属されたんだよな。」

 リーフ本人は気の利いた言葉を待っていたらしく、少し落胆した。

「あ、うん、シュリさんが陣頭指揮とっててね、アルフォンスさんのギルドを配備させたみたい。
 だから私この後外部に行かなきゃいけないんだ〜。」

 リーフはめげずに、アランに信号を送る。
 アランに荷物を持ってもらって、二人で並んで歩く、そんな小さな憧れを現実にするために。
 しかし予想外の答えに、徐々に顔の表情が険しくなるリーフ。

「そっか、アルフォンスさん達がついててくれれば安心だな。
 彼らの強さは以前あそこにいた俺が保証する。」

 彼女の表情などつゆ知らず、リーフの家目指し駆け出すアラン。

「ん、でもさ、やっぱ戦う前に疲れたら皆になにかと迷惑になっちゃう。
 結構買ったからこれ重いんだよね。」
 
 実際に彼女にとっては荷物は少し重かった。
 この状態では満足に雨の中を走れない。
 これでもかと言わんばかりの言葉を言った以上、最後の期待をするリーフ。

「大丈夫だろ、おまえマルトース卿の弟子だし。それに…。」

 そこまで言おうとして、彼女が少し離れたところで立ち尽くしている事に気がつくアラン。
 
 最初はどんな意図があるのかわからなかったが、最後のリーフの言葉の意味はアランにもわかった。
 しかし、アランもどこか恥ずかしさがあった。
 レクサスとリトがよくそうしているのを見ると、確かに羨ましいという感情は抱く。
 だが、今まで彼女などいなかったアラン自身は、そういったことをするためには勇気が必要だった。
 そして決定的な理由がもうひとつ。
 アランはこれまで姉と二人暮しだったため、母親に甘えるといったことがない。
 ただ多感な時期なだけに、そういった甘えにすがりたくなる時もある。
 それをネリアに求めることは彼にはできない。
 そう、彼が求めているのは血の繋がった女性ではない、家族としてではなく、恋人として。
 ネリアが結婚しないのは不甲斐ないアラン自身がいるから。
 そう彼が思うことにより、いつしか恋人に対しての甘えという感情が大きくなった。
 アランもリーフも17歳になり、リーフも女性らしさが表れてきた。
 ほんのりと浮き上がる美しい鎖骨。
 柔らかで緩やかな曲線を描く二つの山。
 髪を結い上げた時に覗かせる白いうなじと垂れる細い後れ毛。
 その甘えという感情が女性としてのリーフに向きだしているのを、彼は理解している。
 しかし、今まで幼馴染としての関係なだけに、そこから恋人という関係に発展させることが、
 如何に彼を悩ませているかは言うまでもない。
 
 それはリーフも同じだった。だから――――
 
 アランは慌ててリーフの下へ駆け寄ると、彼女の頬に流れるものを見た。
 それが雨のせいなのか、そうでないのかは彼には理解できなかった。
 しかし、彼女の肩が少し小刻みに揺れている。
 沈黙はまずいと直感的に彼は判断する。
 とっさに彼は彼女の荷物を右手に取り、左手で彼女の右手を引っ張り駆け出した。
 
 リーフは手を繋がれていることを意識してしまい、
 突然のことで驚いた彼女の心臓の鼓動は益々早くなる。
 熱くなる胸に彼女は左手を当てる。
 彼女の左手は胸の痛みを和らげようとするために、握られていた。
 いつしか涙は彼女の顔から消えていた。
 幼少の頃から追いかけ続けた小さな背中は、今は大きく逞しくなってしまっているけれど、
 それでも昔と変わらない優しさ感じさせるその背中を、
 今も彼女は追いかけながらじっと見つめ続けていた。

 二人の小さいけれど、確かな進歩を祝うかのように、
 空は徐々に雨を止ませ、月は光を覗かせようとする。
 
 どれだけの時間を彼らはこうして駆けていたのだろう。
 彼女の家の近くまで来ることは本来であれば、そう時を費やすものではない。
 しかし二人にはとても長く感じられた。
 既に空には雨を降らせる黒い雲はなく、月が眩い光を見せ始めていた。


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