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死角空間
【SF その他小説】

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俺の身に起きたこと-1

俺はどうやら蜘蛛の巣に捕まった虫けらのような立場にあるらしい。
こういう恐ろしい罠が現実の世界にあったなんて今まで勿論知らなかった。

俺は大学在学中にたった一人の肉親の母親を病気で亡くした。
それで天涯孤独になった。
それでも必死の思いで苦学してなんとか卒業したが、お次に来たのが就職地獄だ。
就活に明け暮れているうちに、バイトで溜めた資金も底を尽き一文無しになった。
もちろん数十社受けた試験もすべて不採用だった。
水道・ガス・電気を止められ、借りていた部屋から荷物を出されてしまった。
腹が減ってコンビニで食べ物を万引きしたところを捕まって、警察に突き出された。
一晩泊められてから警察の留置場を出た俺に勿論行く当てなんぞない。
俺は浜辺で拾ったロープを持って、空腹でふらふらする足取りで山に向かった。
そして枝ぶりの良い木を選んで首を吊った。
その後はよく覚えていない。
目が覚めたとき、俺は地面に倒れていた。
見上げると頭上にはロープが垂れ下がっている。
どうやって首の縄を外したのか覚えていない。
俺は自殺することも諦めて、ふらふらと町に降りて行った。
だが、町に出ても妙なことに誰も俺に関心を示さないのだ。
腹ペコで疲れ果て朦朧とした意識でふらふら歩いている俺とすれ違っても、誰も眉を顰めもせず好奇の目で見ることもない。
もうこうなったらまた万引きでもして警察に突き出してもらうしかない。
俺は一軒の大型食料品店に入って惣菜コーナーに行き、コロッケを手づかみで2・3個食べた。
すぐ傍に店員がいたが、どういう訳か知らぬ振りをしている。
きっと俺に憐れみを覚えて黙っていたのだろう。
それとも様子を見て後で店長に知らせる積りなのか?
その後俺はパンコーナーでクリームパンとアンパンを食べた。
勿論立ち食いだ。
だが、同じコーナーでパンを選んでいる女性客も俺に関心を示そうともしない。
 


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