投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

汚れた教室 〜教室長マヤの日常〜
【レイプ 官能小説】

汚れた教室 〜教室長マヤの日常〜の最初へ 汚れた教室 〜教室長マヤの日常〜 34 汚れた教室 〜教室長マヤの日常〜 36 汚れた教室 〜教室長マヤの日常〜の最後へ

淫らなふたりを見つめる目-2

「僕はあんな馬鹿どもとは違う。私立中学をやめたのも、勉強についていけなかったからじゃない。校風が自分に合わなかったからだ。無理して通うほどの場所じゃないから、こっちからやめてやったんだ」

 真っ赤なウソ。精一杯の虚勢。不遜な態度に似合わない幼い声。本当はテストのたびごとに点数が下がり続け、学校側から暗に公立への編入を迫られた。母親が後から申し訳なさそうに教えてくれた。

 ユタカは塾にも最初の数回来ただけで、あとは姿を見せなくなった。同じ中学の生徒が5人ほどいたからだ。同級生たちはユタカの姿を見ると、あからさまに嫌そうな態度を見せ、ユタカ自身も青白い顔をさらに蒼白にして居心地悪そうに視線をさまよわせていた。

 担当した講師は雪村と久保田。塾にも顔を見せなくなったユタカのために、マヤと講師たちで相談しながらちょっとした手紙を書き、宿題用のプリントを作って週に1度のペースで自宅に郵送している。

「先生方の送ってくださるお手紙、あれだけは本当に嬉しそうに読んでいたんです……」

「ああ、それはよかったです。ご迷惑ではないかと思いながら送らせていただいていたので」

「迷惑だなんて、とんでもない。あの……でも、もう……」

 まわりの視線を気にするように顔を伏せ、目を真っ赤にしながら母親が嗚咽を漏らした。

「あの、大丈夫ですか? ユタカくん……」

「あの子、一昨日……自分の部屋で首を吊ろうとしたんです……幸い、隣の部屋にいた兄が物音に気付いて大事には至りませんでしたが……」

 かける言葉が見当たらなくなる。仕事として割り切れる部分と、そうでない部分。心臓が握りつぶされるような痛み。母親はもう、ユタカに期待をかけるのをやめる、と泣く。

「わたしが……あの子を追い詰めたんです。小さいときから親戚の中でも何でも一番早くできるようになって……歩くのも、話すのも……自慢の子供だったんです……。小学校のときも、主人が卒業した学校と同じ私立中学に入らせるために勉強漬けで……勉強だけしかしてこなくて、いつのまにか他人の気持ちがわからない子になってしまって……」

「お母様が悪いわけじゃないと思いますよ、いろいろなことが重なってしまっただけで」

「いいえ、わたしがあの子に、今は勉強だけしていればいいって言い続けてきたから……あんなふうにいじめられて……学校にも何度も行ってみたんですが、親から見てもユタカの態度は目に余るものがあって……まわりの生徒さんは本当に普通のお子さんばかりでした……本当に、わたしのせいなんです……」

 目の前でさめざめと泣く母親に対して、マヤの心が急速に冷めていく。本当に自分が悪いと思うのなら、1分1秒を惜しんでユタカの傍にいてやるべきではないのか。父親は海外に単身赴任中で、子育てが母親の肩だけに重くのしかかっているのはわかる。それでも、こんなところでマヤを相手にぐずぐずと言い訳をしていたって、何の解決にもならない。

 こういう母親たちは教室の中でも少なくない。誰かに聞いてほしい、誰かに慰めてほしい。『あなたが悪いわけじゃないですよ』と許しの言葉をかけてほしい。

 甘えるな、とマヤは心の中で吐き捨てる。自分が選んだ相手と、自分が望み、その手で育てた子供、そして自分で選んできた人生。どうしてそこに責任を持てないのだ。どうして誰かの言葉にすがろうとするのだ。言いようのない怒りがふつふつと湧きあがる。

 ああ、やめよう。ここで弱っている母親にひどい言葉をぶつけたところで、それこそ何の解決にもならない。意識を切り替える。頭の中で携帯電話のアドレス帳をスクロールする。今夜は誰と遊ぼうか……素敵な大人の男たちの顔を思い浮かべる。蕩けるような甘い時間をイメージする。どす黒い怒りが消えていく。

まだ泣きながら何かを訴え続ける母親の声が耳を素通りし始める。ただ口をパクパクと動かしている金魚のように見えてくる。ひらりひらりと優雅に泳ぐ金魚たち。しょせんスポイルされたガラスケースの中から出ては生きられない。

 ユタカの母親はそれから3時間近く言い訳とも愚痴ともつかないようなことを話し続け、最終的にマヤが今度ユタカの携帯電話に直接電話をして話してみるということで落ち着いた。


汚れた教室 〜教室長マヤの日常〜の最初へ 汚れた教室 〜教室長マヤの日常〜 34 汚れた教室 〜教室長マヤの日常〜 36 汚れた教室 〜教室長マヤの日常〜の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前