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愛しさと渇望
【大人 恋愛小説】

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いつもの夜、出水千穂-3

煙草に火を点け、思いっきり紫煙を吐き出す。誰に遠慮することもなく煙に満たされる。ああ、至福だ。
下着のままくわえ煙草でフラフラと動き回り、つまみに何か、と棚の奥からスナック菓子を引っ張りだし、袋を破いて手掴みで口に放り込む。
青海苔と塩、そして化学調味料。ジャンクだと言われようが、今は人目がないのだ。
べとついた指を舐めても、口の回りを汚しても、ビール片手に歩きながら食べても。

「静かなもんだ」

小姑のような桜木も。
周りの目ばかりを気にして突っかかってくる斎川も。
ああいう奴等がいなければ、あたしだってこの通り大人しく出来てんのに。そう心で呟く。


「………っていうか」


昼に言われた斎川の声を思い出して腹をつまむ。
『男日照り』『万年処女』
いやいや、確かに最近受け入れてないが、枯れてる訳じゃない。
腹だって出てないし、乳だって垂れてない。

「やる時間がないだけ、……そう、正解。」

一人ノリツッコミも虚しく、言い訳だと気づいてはいる。
時間とか、忙しいとか、そんなんじゃなくて。

「男が……良いなっていう奴すらいないから恋すら落ちやしない」

恋、そういった瞬間似合わなすぎて顔が火照る。いやいや、そんなキャラじゃないから。

一気に残りのビールを煽り、少し冷えたおにぎりにかぶりつく。
咀嚼しながら考える。
流され過ぎたんだ、斎川に。
男がいないことを気にする必要がどこにある?
そう、そうなんだ。
あたしには

「仕事があれば他は必要ないんだから」

そう結論付け、風呂場へと向かう。
頭から一日の疲れを洗い流し、湯船に浸かり、着替えて寝付く頃には頭の中から追い出してしまおう。
そう信じて、出水は長い一日に終止符を打つことに決めたのだった。







◇◇◇◇◇◇


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