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深海の熱帯魚
【純愛 恋愛小説】

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.25 久野智樹-1

 半死半生の二人は、何とか家に帰れるとの事で、二人仲良く家を後にした。至も人が良すぎる。
 まぁ酒に弱い奴らじゃないし、冷たい夜風にでも当たれば酔いも覚めるだろう。そうしたら至に残酷な現実がつきつけられるだろう。
 問題はこの二人だ。完全に眠っている。二人ともぐっすりだ。塁に至っては、だらしなく涎をたらしている。
 とりあえず二人に毛布を掛け、俺は残飯処理をしたり、食器を洗っていた。

 俺の家だからって気を抜き過ぎだ。明日は好きなDVDを観ながら過ごそうと思ってたのに、台無しだ。いや、まぁ朝早く帰ってくれればそれでいいんだけど。
 考え事をしながら食器を洗っていると、手が滑ってグラスが一個滑り落ち、派手な音を立てて割れてしまった。近くにいた塁の所へ破片が飛ばなくて幸いだった。
 破片は台所の蛍光灯を反射して鈍く白く光り、俺はそれらをゴム手袋のまま掴み、集めていると、視線の奥でもぞもぞと動く物体が見えた。
「コップ、割れちゃったの?」
 君枝ちゃんが半身を起こして目を擦っている。可愛い。
「ちょっと手が滑って。つーか起こしちゃってごめん」
 俺は近くにあった新聞紙でその破片を包み込み、ビニール袋に入れた。
「あれ、みんなは?」
 きょろきょろと見回すので「一人死亡」とゴム手袋の先で足元の塁を指差した。「至と拓美ちゃんはの終電前に帰ったよ」
「え、電車終わっちゃったの?」
 時計を見ている。眼鏡を掛けていないので時計は見えていないだろう。もう終電が終わってどれぐらい経ってると思ってるんだ。
「いいよ、そのまま寝て帰りなよ。明日、俺は予定ないし」
 洗い物の続きをしていると「手伝うよ」と眼鏡を掛けて起き上がり、隣に寄って来たので「いいよ、もうやる事無いし。終わったらお茶出すから」と言って座っていてもらった。



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