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画家≒幸せ
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画家≒幸せ-3

しかし3日待っても4日待っても、彼女に変化は無かった。彼は途方に暮れた。もう絵の具一色買うお金も残されていない、新しい作品に取り掛かる事も出来ない。だから彼は待ち続けた。彼女との思い出の風景画と、彼女の絵と、彫像。その真ん中で小さな椅子に座って、ひたすら待ち続けた。しかし彼女は動かなかった。彼には理由が解らなかった。そして彼はもう待つ事が出来なくなってきていた。彼は何十日かぶりに椅子から立ち上がると、彫像の彼女を抱き締めて…そしてそのままゆっくりと床に倒れていった。彫像は衝撃でバラバラになった。彼は倒れたまま、破片を拾う事も出来ず、彼女の左目の欠片を見つめた。こんなに完璧なのにどうしてだめなんだ…と呟いた。欠片になっても美しい彼女の目は、彼を見てはいなかった。彼の後ろをただまっすぐ見ていた。彼はゆっくりと首だけを捻った
。まだ後ろが見えない。少し体を傾けた。そうすると後ろにあるもの、彼の風景画が視界の隅に写った。それだけで十分だったんだ。彼は全てを悟った。彼女は彼と、そして彼の絵を何よりも大切に思っていた、という事を。彼は微笑んだ。『そうか、君は…』と砕けた彼女に囁いて、そっと目蓋を閉じた。そして彼が目を開く事は無かった。」

 真上からだった日差しが、斜めから差している。
「絵描きさんは何て言うつもりだったんだろうね?」 ミユキは少し俯いて言った。
「それは彼にしかわからないね。ミユキは彼が可哀相だと思う?」
 少し考えて、ミユキは顔を上げた。
「うん、可哀相だと思う。でも…絵描きさんは幸せだったんじゃないかなぁ。」 僕は立ち上がって、ズボンに付いた芝生を払った。「そうかもね。さぁ、少し外に居すぎたから、もう帰ろう。」
 僕達は広葉樹の下を離れた。


 車椅子が滑らかに廊下を滑り、病室に辿り着く。ミユキを車椅子から抱き上げ、ベッドに寝かせて布団を掛けながら、その小さな体を見た。
 僕はミユキにただ根拠も無く幸せになれる話を決してしない。だってこの世の幸せは平等じゃないから。それを一番わかっているのはミユキだから。どうして遊びたい盛りの子供が病院から一歩も出られないんだ?どうしてこんな幼い女の子の命があと少ししか無いんだ?…僕にはわからない。だから僕はミユキに話をする。僕の勝手な作り話を。その中に不幸せと幸せの両方を詰め込んで。そして僕は答えを探す。ミユキの傍で…。


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