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『The girl & boy』
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『The girl & boy』-2

だからきっと、彼という一固体。


それは一生誰にも知れない、ただ孤高に、絶対的に彼個人の在り方で在り続け、それ以外のものにはならないのだと。

この男だけは、この世が終わる最期のその瞬間まで、あらゆる手段と絶対の余裕を失わないのだと。


そう信じて疑わなかった。


それが一体。


膝を付き、どうしようも無い淵に追い込まれ、余裕などどこにも見当たらないその姿。

いつでも自信に満ちていた雄弁なあの声が、今は憔悴に嗄れている。

いつでも毅然と先を見据えていたあの目が、今は無力さに打ちひしがれている。


おかしい。


こんな男は知らない。


この人は、だれ?


「君が、一体、何を思い悩む事があるんだ」


ふらふらと、少しでも適切な言葉を探して、私の足は動きだした。


「いつだって、私は君の味方じゃないか」


ぱさり、と握り締めたままだった乾いた布巾がテーブルに乗る。


思い切り胸打たれて、この男が可哀相でどうしようもなくて、かなり感傷的になっていた私は、感情任せの、びっくりするような言葉を選んだ。


乾いた布巾をどうこうする事も忘れ、私は感激と衝動のまま、彼の両手を力一杯握り締めた。

少し涙まで滲んで、自分が、世界で唯一の彼の理解者であるような、そんな二者間に私は心酔していた。


多分、彼は途方も無い思考と限り無い試行の末に、どうしようもない、避けようも無い唯一の選択として、この結果を提出したのだ。

この結論に彼は長い間悩み苦しみ、一人孤独な絶望と戦っていた。


嗚呼、君をここまで絶望の淵に追い詰めたものは、一体何であったのか。


「私はいつだって、君を信頼しているよ」


彼と私が命を張って、そうしなければ世界が存続しないと彼が言うのなら、それはそうなのだろう。


異論など無い。


恐怖など無い。


そのために共に命を賭けられるのなら、それは誇りだと思った。


心中だなんて、たまにはロマンチックな事が言えるじゃないか。

私は彼の苦悩を慰めるように、そんな下手な冗談を言って笑って見せた。


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