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消しゴム
【青春 恋愛小説】

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「消しゴムあった?」
 トスの自主練をしている博美が寄ってきた。
「あったあった。音楽準備室に」
「良かったじゃん」と言って私にパスしてきたので、シューズの紐を結んでいた私は座ったままでトスを仕返した。

 体育館は様々な部活が使用するため、使える時間が限られる。
 幸か不幸か女バレと男バレはコートを半分に区切って練習をするので、練習時間は被っているし、賢太郎の勇姿がチラ見出来る。
 とは言え、自分はチームのエースを任されているので、男に見惚れている場合では無い。
 男バレにコートを全面明け渡し、女子はステージで筋トレをする。その間男子はスパイクの練習をしていた。
 ほら、あの瞬間の顔。悔しそうな表情も。筋トレを三セット終わらせた私は男子のスパイク練習に見入った。
「まーた賢太郎観察日記?」
 同じく終えた博美が近づいてきた。
「ん、そういう訳じゃない」
 よっこらしょと老人の如く声に出して私の隣に座ると「じゃ、何さ」と追求の手を緩めない。
「賢太郎も消しゴム探してたからさ」
 シューズの紐を硬く縛る。次にスパイク練習をするのは自分達だ。
「何なに、やっぱ必死だった?」
 さっきのおまじないの事か。賢太郎がそんなもんに手を出すとは考え難い。
「いや、ふつーに探してふつーに見つかったよ。偶然同じ消しゴムだったけどね」
 博美は薄ら笑いを浮かべて「書いてあるかもよー、『賢太郎、早希』って」
 想像しただけで十分赤面した。
 終了のホイッスルが鳴り、女子がコートに立つ。その度にネットの高さを調整せねばならない。
 賢太郎はこんなに高い位置からボールを打ってるんだ。同じポジションとして羨望だ。
 博美があげるトスで、私はスパイクを打つ。丸一年、これでやってきた。
 私以外に身長の高い女子はおらず、自ずと「エーススパイカー」にされてしまった。
 博美は、中学から強豪校でセッターを務めていただけあって、良い角度に、良い高さに、トスをあげる。
 息が合うと、自分で言うのもなんだが、強力なスパイクが打てる。ステージで筋トレをする男子からも「おお」と声が上がる程だ。
 その中に勿論、賢太郎もいる訳で、私は強い女とは思われたく無かったので微妙な気分だった。


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