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【悲恋 恋愛小説】

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-1

 一週間後、男は現れなかった。
 相変わらずハローワークに通い、今度はパートタイム社員として事務職を斡旋された。
 心療内科に通っている旨を先方に伝えると「今はそういう時代だから」と理解を示してくれた。
 結局、十二月から働き始める事となった。失業保険は切れるが、一カ月程度なら貯金で何とか生活できるだろう。

 心療内科では、薬を飲んでいれば睡眠はとれると伝えた。
 ただ、男の事を考えない日は無かった。考えれば考えるほど、沈む一方なのは何故だろう。
「ハローワークに通えているのなら、それで十分じゃないですか」
 医者はそう言い、処方を変えなかった。

 ハローワークに就職報告に行った際、あの男性に会った。
 就職先が決まった事を伝えると、「良かったですね」と笑みを浮かべてくれた。
「私の方は歳が歳なもんで、なかなかね」
 苦笑している彼には、家族がいる。当然、パートなどではやっていけないだろう。
 検索機で仕事を検索している後姿は、か細く、頼りなかった。

 土曜日は、春巻きと玉子焼き、ポテトサラダに味噌汁を作った。勿論、二人分。
 男は携帯電話を持っていて、私も携帯電話を持っているのに、四月からこちら、一度も通信していないことに気づく。
「明日は行けない」それぐらいのメール、くれたらいいのに、と思う。
 私は冷え切った春巻きを口にした。
 情けなくなって、涙が溢れた。これはきっと、鬱病のせいだ、と思う事にした。


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