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「未来日本戦記」
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「未来日本戦記」-12

−南−
「隊長、あれは?」
「…おそらく戦舞い(イクサマイ)ってヤツだ」
戦舞い、出来てから十数年しか経っていない武術の一つ。
だが、門下生は武術ではなく、舞いの習い事として来ている者が多数だ。
「全然戦闘に向いていないって聞いた事あるぞ」
「じゃあ、越えし力に気を付ければ大丈夫ですね」
「おそらくな」
舞は舞台ならぬ部隊の前に立っていた。
その手には二本の扇とラジカセ。
それを見たから隊長は舞を戦舞い使いと判断したのだ。
「スイッチオン」
舞は機械を地に置き、電源を入れる。
静かなテンポで太鼓の音が聞こえ始めてきた。

「た、隊長」
「びびるな、あれは舞うのに必要な曲だ。あれが激しくなればなるほど、戦いに向くと聞いた事があるが…」
実際、戦舞いを使う者と戦うのは初めてである。
隊長も、少しは不安を抱いて、落ち着きもない。
「さぁて」
舞は二本の扇を勢いよく開く。
「本当はめんどくさいんだけど…流派の決まりでさ、自己紹介してから戦うから」
舞は兵全員に言った。
「戦舞い、二代目当主予定、神楽舞(カグラマイ)。参させ舞わせて頂きます」
ラジカセより、舞曲が響き始める。
それに合わせて、舞は流麗な舞いを…踊らず、舞う。
「おい」
隊長が部下の兵達に言う。

「あの女、捕獲したヤツが好きにしていいぞ」
自分はわざと戦わない、というような台詞。
兵達は隊長の真意を伺う様子もなく、舞に向かって突貫を始めた。
(あんな未知溢れた武術に、いきなり突っ込むような真似はしねぇって。まず、捨て駒で様子見だ)
隊長は腕を組み、遠くから戦況を見ている。
舞に兵達が手を伸ばす。それを開いた扇で押さえた。
「姉ちゃん、こんだけの数を相手出来ないだろ?大人しくしてれば…」
「あいにく、そうは思ってないの。触らないで」
扇で男の顔を撫でる。
「?」
男は別に抵抗しない、攻撃じゃないと判断しているからだ。

「吸気(キュウキ)」
舞の言葉。
それを聞いた抵抗していない男は、白目を剥き、倒れてしまう。
「お、おい!」
仲間を心配する兵。
「吸血鬼は血を吸うけど、私は体の中に流れる気を吸うの」
舞は扇で口元を隠し、上品に笑う。
「それが私の『越えし力』」
兵達が一斉に距離を作る、そして抜刀。
「戦舞い、とくとご覧あれ」
そこで一人の兵が飛び上がり、舞を上方から襲う。
「第一の部・花」
頭上に閉じた扇を流れる動きで、すっ、と構える。
それで相手の刀を防ぐ。
「し、仕込み…」
刀が当たった瞬間、金属特有の音が鳴った。
仕込み鉄扇。
兵が着地をした。

「鉄扇…」
舞は扇で兵を撫でる。
兵は言葉の途中で、体の中の気を失って、気を失う。
「だと…」
糸の切れたマリオネットのように倒れる。
「一撃必殺だからね。皆頑張って避けてねぇ」
舞は兵の群れに向かって歩き始める。
自分の脳天を狙う刀を、扇で押さえる。
そのまま相手の小手に触れる。
吸気。
逃げようとする者、それの背中に触れる。
吸気。
自分に向かって攻撃を仕掛けてくる者の顔に、扇を開きながら打ち込む。
その横から連携で二つの刀が飛んでくる。
腕を交差。
顔の横で、開いた扇を盾にし回避。
その三人を一気に吸気。
倒れる。

「何している!相手の武器は二つだけだぞ、それより多い数で攻めないか!」
隊長が指示をする。
兵達は素直にそれを聞き入れ、舞を四方八方から襲う。
「第二の部・鳥」
遠くで鳴るラジカセのテンポが早くなる。
それと同調している舞の舞いも当然の事ながら…。
「吸血の持続」
速くなる。
次々迫る刀を扇と体捌きで避ける。
近くの男の手を取る。
吸血を持続している舞の手は、自動的に気を吸い取る。
その男が倒れる前に、違う男の背後を取り、首筋を撫で上げる。
吸った気は舞に流れ込んで、力と疾さを増幅させる。
兵の数が、みるみる減っていく。


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