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『桃色の旅』〜変態映画館〜
【OL/お姉さん 官能小説】

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『桃色の旅』〜変態映画館〜-3

 さんざん酔っぱらった愛美を家まで送り届け、自分のアパートへ戻ってきたときには午前2時を過ぎていた。それでも翌日から1週間も休みがあると思えば、多少の夜更かしは気にならない。冷蔵庫を開けてミネラルウォーターをひとくち飲んで、気持ちをリセットさせる。洗面台に向かってメイクを落とし、ザッとシャワーを浴び、汗を流してさっぱりしてからパソコンの電源を入れた。もらったばかりの招待券と施設案内を手元に置き、臨海タウンのホームページと照らし合わせて見る。

 色とりどりの華やかな写真が添えられた各店舗や施設の案内が並ぶページを、順々に流し読みしながらスクロールしていく。どれも楽しそうに見えるけれど、その中で25歳の女がひとりで出かけて行って楽しめそうなものを探そうとすると難しい。遊園地や温泉、動物園にも興味はあるけど、自分ひとりで行くとなるとさすがにちょっと抵抗がある。

 やっぱり映画とかが無難かな。『臨海タウン映画情報』のページをクリックすると、上映中の映画は全部で8本。アクション、SF、恋愛……最近の流行りものは何ひとつ知らないので、どれが良いのかさっぱりわからない。予約状況を確認すると、8本のうち『桃色の旅』という映画にだけ△印が表示され、まだ明日の夕方の回に空席があった。他はすべて×印で満席。

どうせ無料だし、なんでもいいか。そう思って話の内容も確認せずに予約ボタンをクリックするとポン、と音がして黄色い枠組みの中に注意書きが表示された。

『この映画は18歳未満の方はご覧になることができません。あなたは18歳以上ですか?』

 えっ、これって成人向けってこと? 焦って上映情報ページを確認すると、麦わら帽子をかぶった可愛らしい女の子が微笑む写真の横に『これはあなただけの大切な物語です』というような説明書きがあった。これだけではどの程度の内容なのかわからない。

「そんなに凄い感じじゃないみたいだし、これでいいよね……」

 なんとなく自分に言い聞かせながらもう一度予約ボタンを押した。すると、年齢確認の後でもう一度※印付きの注意書きが表示された。

『ご予約のシートは4D仕様となっております。当日はしっかりと体調を整えた上でご来場ください。また途中での退席は他のお客様のご迷惑となりますのでご遠慮願います』

 4Dって何だろう……記憶の糸を手繰る。そういえば去年、愛美が彼氏と出かけた遊園地で4Dの映画が楽しかったって言ってたっけ。映像が飛び出て見えるのと同時に、画面に合わせて本当に風が吹いてきたり、水が飛んできたりするんだとか。

 わたしはまだ3Dの映画さえ見たことが無い。考えてみれば、わたしって本当に知らないことばっかりだな。思わずため息が漏れた。

注意書きの確認ボタンを押し、予約番号を控えて画面を閉じた。上映開始は明日の午後5時から。せっかくの休みなんだから、お昼過ぎまでぐっすり眠ろう。出かけた先で映画の前に何か美味しいものを食べるのもいいかもしれない。空白だけだった1週間の予定がひとつだけでも埋まったことで、なんだか救われたような気持ちになった。

 このときのわたしは、まだわかっていなかった。ただの映画鑑賞が、まさかあんなことになるなんて。


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