投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

満月綺想曲(ルナ・リェーナ・カプリチオ)
【ファンタジー 官能小説】

満月綺想曲(ルナ・リェーナ・カプリチオ)の最初へ 満月綺想曲(ルナ・リェーナ・カプリチオ) 8 満月綺想曲(ルナ・リェーナ・カプリチオ) 10 満月綺想曲(ルナ・リェーナ・カプリチオ)の最後へ

変わり者の錬金術師(注意、性描写あり)-4

 錬金術師の部屋というのは、怪しげなドクロや薄気味悪い剥製などがいっぱいあるものだと、ラヴィは勝手に想像していた。
 しかしルーディの部屋にあったのは、机とベッド、本棚から溢れ出た本の海と、ところせましと置かれている薬草やガラスの実験器具たちだった。

 部屋の一面には、大きな窓が有り、庭に直接出て行けるようになっていた。
 その庭も夜の闇が覆いはじめ、登ってきた細い月が銀色の光を降り注ぐ準備をしている。
 食事の後、ルーディはラヴィの体中についた傷に薬を塗り、丁寧に手当てしてくれた。
 そうしたら、もうこんな時間になってしまったのだ。
 媚薬の体感など、できれば明日に……いや、本当を言えば出来るだけ先延ばしにしたかったが、そうはさせてもらえなかった。

「――香水にしたんだ」

 書き物机の近くにねじ込まれている椅子に腰かけ、差し出された香水のビンを、恐る恐るラヴィは受け取る。
 さっきからルーディは、別人のように見えた。
 優しげな基本はかわらないものの……少し冷たい印象というか……
 市場で「確かに処女だね。」と言った時の、冷静な錬金術師になっていた。

「この香りを嗅いで欲しいんだけど……ああ、ちょっと待って」

 引き出しから紙バサミを取り出し、ルーディは手を伸ばす。

「悪いけど、前髪をあげてくれるかな。顔色の変化も見たいから」

 パチン、パチン。
 紙バサミが、ラヴィの前髪を挟んで後へ持ち上げる。

「この髪形は傷を隠すため?十分可愛い顔してるのに、隠しちゃうのは勿体無い気もするね」
「……」

 半面の傷が晒されるのは嫌だったが、すでにルーディはこれを見ているのだ。
 それに、どのみち彼はラヴィを女性として見ているわけじゃない。

「それじゃ、嗅いでみて」

 香水瓶に入っていた薄紫の水が、霧状になって吹き付けられる。
 目を瞑って、ラベンダーに似た甘い香りを深く吸い込んだ。

「……特に変らないみたい」

 十分ほど経ってから、ラヴィは遠慮がちに言った。

「はぁー、失敗かぁ……」

 残念そうにため息をつき、ルーディはノートに何か書き込む。

「それじゃ、明日はまた少し調合を変えたのを試してくれる?今日はもういいから」
「ええ」

 なんとなくほっとして、ラヴィは立ち上がった。
 ルーディはラヴィの部屋まで用意してくれてあった。二階にある小さな部屋で、きちんとベッドも置かれている。
 久しぶりにまともな寝台で眠れると思うと、嬉しくてたまらない。

「おやすみなさい」

 熱心に本をめくるルーディに、そっと声をかけた。

「おやすみ」

 返事なんか期待してなかったのに、ルーディは本から目をあげ、ラヴィを見てちょっと笑った。

「ハハ、忘れてた」

 長身の青年は立ち上がり、ラヴィの髪を留めていた紙バサミへ手を伸ばす。
 その変化は、突然起こった。

「っん!」

 髪に触れられた瞬間、意志とは無関係に裏返った声が喉をついて出た。

「え?」
「ぁ……ぁ……」

 ドクドクと、体中の血液が急激に加速を増しはじめ、額にじわりと汗が滲む。

「は……あ……ぁ」

 瞳に涙の膜が張って、ルーディの顔がぼやけた。
 もどかしいような熱が肺の奥から競りあがり、力が抜けていく。
 足がもつれて転びそうになり、ルーディに支えられた。

「ふぁぁっん!」

 自分の口から、発情期のネコみたいな声があがるのが、信じられない。

「成功……してたのかな?」

 困惑気味に呟くルーディを、精一杯睨んだ。

「ん、んん……害はないって……言ったのに……ぃ……嘘つ……き……」
「いっ、いや……催淫効果はあるけど……辛い?」
「は……あ……これっ…いや……」
「中和剤を飲めば、すぐ治るから」

 身体中がジクジクした熱に侵されて、辛くてたまらない。
 ルーディの逞しい腕から伝わる体温が、ラヴィを蝕む熱に追い討ちをかける。
 腕から逃れようともがいた拍子に、机にぶつかった。

「あっ!」

 机の端に置かれていた薬ビンが床に落ち、あっけなく割り砕ける。

「うわ!まずい……」

 額に手をあて、ルーディが呻いた。

「ご、ごめんなさい……」
「いや、こんな場所に置いたのが悪いんだし……それに、君に申し訳ない事になるというか……」

 すまなそうな表情で、ルーディはラヴィを見下ろす。

「割れたのは、媚薬の中和剤なんだよ」



満月綺想曲(ルナ・リェーナ・カプリチオ)の最初へ 満月綺想曲(ルナ・リェーナ・カプリチオ) 8 満月綺想曲(ルナ・リェーナ・カプリチオ) 10 満月綺想曲(ルナ・リェーナ・カプリチオ)の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前