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白い世界
【幼馴染 官能小説】

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セカンドストーリー-5

「里桜」

 耳元で名前を呼ばれ、私は現実に引き戻された。
 もう彼は私の知っている彼ではない。
 
 アップルパイが好きだったのは子供の頃の話。今の彼がそんな子供じみた食べ物を未だに好きだとは思えない。

 「いや....お願い....やめて」

 何もできないのは分かっている。
 自分にできることは制止の声をかける事。だけどそんなもの彼が聞いてくれることはない。

 彼は私の言葉を無視して行為を続けている。

 気がつけば周りは静かで生徒たちの声もチャイムも聞こえない。この空間にいるのは私と彼だけになった。

 耳元で水音と息遣いだけが聞こえる。
 
 そのうち彼がお尻と同じようにゆっくりと太ももをなでる。
 胸を揉んでいた手が頂点のそれを掴んだ瞬間。ビリッとした感覚に襲われて私は怖くなった。
 
「いやぁ!」

 体が勝手に動いた。彼が少しだけ私から離れる。

 「いや?何で?」

 怒っているとも笑っているとも言えない表情で彼が言う。

 「感じてたくせに」

 「何でって、だって好きでもないのに」

 「俺は里桜の事好きだよ」

 彼にそう言われて心臓がドキリとした。
 綺麗な金髪を少しだけ揺らして、その透明感のある綺麗な目に見つめられてそんな事を言われたら誰だってその気になってしまう。

 好きという言葉に惑わされてしまいそうになる。
 だけど自分の全てを彼にさらけ出すことはできない。
 
 「冗談はやめて。もう帰ろう」

 彼を見ずに落ちたカバンを拾おうとしてしゃがんだ時だった。
 カバンに伸びた手首が掴まれる。さっきよりも強い力でキリキリと締めあげられる。
 
 「痛い」
 
 「痛い?でもね、里桜。俺はもっと痛いんだよ」
 
 そのまま手を上に持ち上げられて壁に押し付けられた。
 昔の非力な彼からは想像もできないほどの力だった。

 顔は穏やかに笑っているはずなのに、どこか気を許さない言い方にじんわりと汗が噴き出す。

今は夏だから汗が出て当たり前なのに、汗とは違うねっとりとしたものが体を包み込む。
 
「痛いってば」

 顔にしわが寄る。

 「そうだね。痛いだろうね」

 「離して!」

 「離したら里桜はまた俺から離れて行くだろ?だからダメ」

 これだけ力を入れているのに彼には全くかなわない。

 もう一方の手も同様に掴まれて、私の体を壁に押し付けた。万歳をするように両手を大きく持ち上げられて私はパニックに陥った。

 「だから逃げてないってば!離してよ!」

 「嘘つきは閻魔様に舌を抜かれるんだよ。こんな風にね」

 彼が再びキスをする。だけどさっきのような優しいものではなく、無理やり舌で私の唇を割って中に侵入すると、素早く私の舌に絡め思いきり吸い上げてきた。

 「んんん!?」

 本当に舌が引っこ抜かれそうになる。
 目をギュッとつぶって、私は必死に助けを求めた。
 
 鼻から一気に抜ける息。あまりの痛さに私の目からは涙がこぼれた。

 次第にかすむ視界。
 
 「どう?舌を抜かれた気分は」
 
 唇を放して彼がそう聞いた。涙を舌で舐められる。あまりの恥ずかしさにさらに涙があふれだす。
 
「どうして?」

 今はそれだけしか聞けない。

 「何が?」
 「どうして....こんなこと....」

 声をつませてそういうと、彼がため息をついた。

 「だから里桜が好きだから。好きな人と1つになりたいと思うのは自然の事だよ」

 さも当然のように彼が言う。

 1つになりたいなんて思っていないくせに。

 そう言いたいのに声が出てこない。

 彼の笑っている顔に反して、どこか冷たいものが混じる声がそれを許してはくれない。

 「それとも何?里桜は俺じゃ嫌なの?遠峯の事は愛して俺の事は愛せないの?」

 時が止まった。
 何でそれを彼が知っているのだろう。婚約者がいることは秘密だった。
 
 先方も私が大学を卒業するまでは黙っておいた方が良いと言っていた。
 それは私の学生生活に支障が出るかもしれないという配慮からだ。
 
 「どうして?」
 
 「里桜には教えてあげない」

 


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