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富子淫情
【歴史物 官能小説】

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富子淫情-7

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―――別荘内・離れの浴室




今富子が身を沈めているのは、
浴室に特別にしつらえられた“別荘自慢"の檜の浴槽である。



薄く白い襦袢を身につけたまま富子は思わず目を瞑り、
湯の表面から沸き上がってくる熱気を顔に直接感じていた。


(ああ・・・・気持ちいい'・・・・)



既に日は西に沈み、嵐山は夜の帳の下にあった。

そして浴室にある唯一の窓越しに初夏の三日月が見えている。

別荘の離れに位置していて外から聞こえてくるのは、鈴虫の鳴き声。
それ以外の音も声も一切聞こえない静けさが、離れの周りを包みこんでいた。

あとは富子が湯船の中で微かに動く度に波打つ湯面からの水音。



―――チャプン・・・・・



「こんなに気持ちよく湯に浸かれるのは、本当に久しぶりだこと・・・」



目を閉じたまま ひとりごちる富子。
いつも富子に付き添う直近の侍女については、
あえて富子が1人の時間を過ごせるように、
渡り廊下入り口に待機している。

富子が呼ぶまでは、決して離れにすら近づくことはない。

その為浴室には、富子の他に人影はない。
湯炊きの下人も先程薪をくべおわり、その場を離れたばかりだった。





(・・・それにしても)


湯槽の中で血行が良くなり気持ち良さを味わいながら富子の脳裏には あの右近の顔が浮かんでいた。



(・・・あのような凛々しき顔立ち。そして、衣服の上からでも分かる 鍛えられた精悍さ・・・・)



富子の中で再び悶々とした気分が蘇ってくる。
しかも今回ははっきりとした対象ができたせいで、 これまでになく大きい。




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