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氷炎の舞踏曲
【ファンタジー 官能小説】

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一人ではできない事、ついての記述。-4

 ずっと昔から、飢え死にしそうな程、この言葉に飢えていた。
“喰わないのは、善人じゃない。死人だけ。”
 だから、恥じる事無く、サーフィもたくさん、その言葉を口にする。
「愛してます…」
 夢中でヘルマンのシャツのボタンを外し、初めて見る彼の素肌に手を滑らせ、思い切り抱きしめて愛を囁く。
「あ……ヘル……マン……愛して…ます……」
「もっと呼んでください……サーフィ、愛しています。君が……君だけが……僕の特別です……。」
 嬉しすぎて、また涙が零れた。
 誰かの代理人形じゃない。ヘルマンは、サーフィ自身に心を動かしてくれた。それが……たとえようもなく、嬉しい。
「サーフィ……。……サーフィっ……!」
 彼に似つかわしくない、切羽詰った必死な声音で、何度も名前を呼ばれる。
 でも、取り澄ました声よりも、ずっとずっと愛しくてたまらない。
 そしてサーフィは、あの治療薬が、思い込みで媚薬の効果など発揮していなかった事を、学んだ。
 あの薬がなくても、まるで変わらない……いや。もっともっと、遥かに気持ちよかった。
 触れ合う素肌に、どうしようもなく欲情する。気づけば自分から足を開いて、男を受け入れる姿勢をつくっていた。
 みっともないほどトロトロに濡れ、甘い嬌声は止まらなくて……。
「は……んんっ……ぁ……あ!ああっ!!」
 押し込まれた灼熱に応え、互いに息も付けぬほど抱き合って絶頂を迎えた。
 奥に流し込まれた精にも感じて、身体を引きつらせながら、抱きしめて口付けを交わす。

「――君の身体は、もう普通の人間と同じですから……。」
 解かれてシーツの上に散らばった銀髪を撫でながら、ヘルマンがポツリと言った。
 荒い呼吸が静まってからも、互いに寝台から離れがたくて、じゃれあうような触れ合いを繰り返していた。
「同じですから?」
 なかなか先を言ってくれないので、じれったくなってサーフィは促す。
「その……子どもが、できるかもしれません。」
「子ども……。」
「何しろ僕は、これから毎日、君が悲鳴をあげるほど抱くつもりですからね。」
 喰えない悪党の笑みを取り戻したヘルマンが、にこやかに言い放つ。
「あ……。」
 思わず顔を赤くしたサーフィの唇に、軽いキスが落された。
「嫌ですか?」
「そっ、そんなわけが……」
 嬉しいに決まっている。
 ヘルマンの整った口元に、いささか卑猥な笑みが浮んだ。
「では、同意という事で。」
「んっ!」
 乳首を舌で舐め上げられ、足の奥に指を忍び込まされて、サーフィは仰天して更に顔を赤くする。
 さきほど注ぎ込まれた精が、まだ奥に残っているのに……。
「あっ!あのっ!?」
「まだ、全然足りませんよ。我慢していた分、もっと君を食べさせてください。」
 氷の瞳の中に、押さえ切れない情欲の炎が揺らめいている。
 ――抗議の声は、あっさり口付けに吸い取られてしまった。


 クリーム色と深緑の瀟洒な内装をした錬金術ギルドの大ホールは、果物や花をふんだん使って飾りつけられ、夏を祝うパーティーが盛況に開かれている。
 蝋燭よりも明るい、不思議な魔法灯火の下で、着飾った男女が優雅に踊っている。
 サーフィも久しぶりにドレスを着た。ヘルマンがどこからか調達してきた、夕日色の美しいドレスだ。
 やはり正装をした彼にエスコートされ、ワルツのステップを踏む。
 相変わらず、何をやらせても完璧なこのお方は、ダンスも申し分ない。
 それにしても、こんなに幸せで夢みたいなダンスは、生まれて初めてだった。
手を取り合い、微笑みあって、『一人ではできない事』を堪能する。
 ひとしきり踊った後、ホールから人気のない廊下へ連れ出された。
「口づけも、一人では出来ない事ですね。」
 幸せそうに呟かれ、誰も周囲にいないのを良い事に、思う存分唇を貪られる。
 情熱的なそれに翻弄されながらも、サーフィはおかしくてたまらない。

 この数日だけでも、『一人でできない事』は他にもいっぱいあった事に、ヘルマンは気付いていないのだろうか?
 手を繋ぐのも、連れ立って街を歩くのも、会話するのも、ベッドで睦みあうのも……!
 みんなみんな、一人では出来ない。

「ええ。貴方でも、不可能な事です。」
 ニッコリ微笑み返し、サーフィも自分から顔を寄せ、キスをねだった。
 そして、小さな疑問を胸に浮べる。
 一体誰だったのだろう。ヘルマンに,『ダンスは一人でできない。』と、教えたのは?
「……君の赤い瞳が好きです。この国の氷も溶かす、灼熱の炎の色だ。」
 うっとりつぶやかれ、その表現に驚く。
 ずっと……忌まわしい血色だと思っていた。

「暖かい……溶けてしまいそうです。」
 サーフィを抱きしめ、ヘルマンがこのうえなく幸せそうに呟いた。



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