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氷炎の舞踏曲
【ファンタジー 官能小説】

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変貌と絶望についての記述-4

 涙に歪む視線の先で、わずかにヘルマンが顔をしかめた。
「君は、まだ僕に価値を感じるとでも言うのですか?」
 先ほどまでの、嘲笑混じりの声ではなく、恐ろしいほど静かで抑揚のない声だった。
「もう何度も言いましたが……君を造ったのは、僕です。」
 しなやかな指がサーフィの顎にかかり、くいと持ち上げられる。
 整った冷たい美貌が、冷酷きわまりない眼差しで見下ろしている。
「下種な雇用主が、君の母上に執着している事を、僕は知っておりました。孤独な玩具にされると知った上で、ためらいなく君を作りました。」
「……。」
「君にとって、僕は全ての元凶であると言っても過言ではありません。」
「存じております!」
 溢れ出した涙が、頬を伝った。
「打算的で、必要ならばどんなにも冷酷になれる人だとも知っております。ですが……それでも私は……ヘルマンさまを…………っ!」

 いまやサーフィにとって、ヘルマンは世界の全てだ。
 だからこそ、あの冷静で的確な指摘が悔しかった。

(見限ったのなら、もう放っておいて!また、愚かな期待してしまうから……!貴方は、誰も……自分さえ愛さない事を、知っているの!)

 自由を掴むために足掻くのを一笑され、子どもじみたやり方で怒りをぶつけてしまった。
 本当は、解っている。
 ヘルマンは事実を告げただけなのだ。サーフィを好きだとか嫌いとかは関係ない。
 この方は、いつでも事実しか言わない。

 その時ふいに、クラリ……と、眩暈がした。
「っ……?」
 唐突に、立っていられない程の強烈な睡魔が襲いかかり、足がふらつく。
「ああ、言い忘れましたが……。」
 また飄々とした笑みの仮面をかぶったヘルマンが、抱きかかえるようにしてサーフィを支える。
「先ほどの飲み物は、睡眠薬入りです。ジュースには、違いありませんが。」
 そして、低い声が耳元に小さく……苦しげに囁きかけた。
「……すぐに君も、僕へ価値など感じなくなりますよ。」

聞こえたのは、そこまでだった。



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