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氷炎の舞踏曲
【ファンタジー 官能小説】

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君の一番欲しい物。についての記述。-6

 こげ茶の両目を真ん丸くした後、露骨にアイリーンは顔をしかめた。
「脳みそのネジが緩んだかい?新しいパーツを仕入れな。」
「おやおや。随分なセリフですね。」
 煙管をくゆらせながら、アイリーンがしげしげとヘルマンを眺める。
「寝てくれますか?って、意味でもなさそうだね。それならもっと色気出して誘いなよ。旦那の尻を蹴っ飛ばして叩き出すだけで、返答は済むからね。」
「君は見た目も魅力的ですが、そういう賢い所に、僕は一目置いています。」
「光栄だね。」
「お世辞じゃありませんよ。」
「知ってるさ。長い付き合いだって、自分で言ったばかりだろ。」

 もう一度、天井に向けてゆっくりとアイリーンが紫煙を吐く。
「見た目はあたしより若いのに、実は曾じいさまより年上なのは、別に問題ない。」
「はぁ。」
「とんだ喰えない悪党なのも、まぁ仕方ない。人のことは言えないしね。」
「ふぅん。」
「面は芸術品で、頭も切れる。稼ぎもいい。ついでにベッドのテクまで一流ときた。」
「はて?君を寝台に引っ張り込んだ覚えはありませんがね。」
「うちの情報網には、下世話な話もしこたま入る。」
 苦笑するヘルマンに向けて、事も無げに言う。
 先ほどから、上品とは言いがたい言葉ばかりだが、アイリーンがさっぱり言うと、あまり下品には聞こえない。
「へぇ。それでは、僕のどこが気に喰わないのですか?可愛いアイリーン。そんなに絶賛されたら、少しくらい自惚れても良さそうなものじゃありませんか。」
「なに、大した高望みじゃない。あたしはね、自分が惚れた男には、同じくらい自分を愛して欲しい。それだけさ。」
 ニヤリと笑って、アイリーンは片目を瞑る。
「だからね、あたしが死んだって泣きもしないだろうな男は、お断りだ。」
 ヘルマンも、ニヤリと笑った。
「君の鑑定眼は、あいかわらず一級品ですよ。」
 そして、ポツリと呟く。
「ある女性に、愛していると言われました。」
「そんなのしょっちゅうじゃないか。」
「ええ。」
「本気なら適当にあしらって、遊びなら楽しめばいい。そこら辺はお手のもんだろ?ミスタ・パーフェクト。」
 彼女独特の呼び名で締めくくられた。
 煙管を旨そうに加えている口から出る言葉は、いつも正確に的を得ている。
 今日もそうだったから、にこやかに笑って、肯定しようとした。
「……ええ。」
 けれど、なんだか顔の筋肉が上手く動かない。
 もう一度、アイリーンが目を丸くして、ヘルマンを凝視した。
「旦那、なんて酷いツラしてるんだい。」
 煙管を口から離し、信じられない驚きを表すように、ゆっくりと、唇を動かした。

「まるで、泣き出す寸前のガキみたいだ。」



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