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氷炎の舞踏曲
【ファンタジー 官能小説】

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東の女性についての記述-4

 そこまで言った所で、ようやくカダムは、ヘルマンの冷ややかな視線に気づいたらしい。
「なんだその眼は。今度はモラルでも説く気か?」
「生憎、モラルとは無縁でしてね。それに僕は、慈悲深いヒューマニストでもありませんよ。」
 冷淡な声で、ヘルマンは事実を告げる。不愉快な事だが、事実だから仕方ない。
「下種で品の無い雇用主にへつらう、現実主義の錬金術師(リアリスト・アルケミスト)でしてね。」
「なんだとっ!」
 カダムは怒りで顔を紫色に染める。
「手に入らなかった女性を殺し、代用品を造らせる男に、どんな品性があると言うんです?くく……同じ名前まで付けて。」
「ぐ……」
 ズバリと指摘され、更に怒りを増した顔色は、ドス黒いまでになる。
「だったらなんだ!造らないのなら契約……」
「造りますよ。可能なものは、何でも造るとの契約ですからね。」
 平然と答えたヘルマンに、カダムは今度は拍子抜けしたらしい。
 アホのようにポカンと口をあける。
「嘘はつきたくありませんのでね。僕の誇りはそれだけ……他はどうでも良いんですよ。」
 カダムに同情する気など露ほどもないが、かと言って、この女性に同情する気も無い。
 おとぎ話ならともかく、これは弱肉強食の厳しい現実だ。
 仮にも元将軍だというなら、彼女もそれを知っているはずだろう。
 まだ大口を開けている男の横を通り、手早く薬品の支度をはじめる。
 注射前に彼女の命が事切れてしまったら、ホムンクルスは作れない。
「彼女は貴方に負けた。ただそれだけでしょう。」
 注射針に満たした薬液が、彼女の腹部に注射される。一回、激しく体を震わせて、彼女は死んだ。ホムンクルスの作成に、どうやら間に合ったらしい……。
「お前は、品性がどうのと抜かしたが……」
 毒をいっぱいに含んだ声で、カダムが意地悪く言う。
「その俺に加担したお前には、どんな品性がある?ええ?」
「何にもありませんね。」
 メスをとりだし次の処置をしながら、振り向きもせずにヘルマンは答える。

「ですが、それも別に――どうでもいい事ですよ。」

 反乱が起こした王都への被害は大きかったが、混乱期は程なく収まった。
 旧王家を支持しようとする有力者が何人も暗殺されると、主君を失った兵士達にカダムは寛容な態度を見せた。
 そしてつぎつぎと軍勢を増やし、またそれを背景に次の敵を降伏させ、それでも懐柔できないものは圧倒的な兵力の差で叩き潰した。
 絶妙なアメとムチは、国民にも注がれた。税も表立っては重くならず、巧みにさりげなく増やされた負担に、そう反感は抱かれなかった。
 こうしてシシリーナ国は、カダムという新たな王を受け入れた。

――数年すると、徐々にカダムは残虐な暴君の本性を現し始めたが、その時にはもう、彼に逆らえるだけの力や気概をもつ有力者は、ことごとく始末されていた。



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