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セフレごっこ。
【女性向け 官能小説】

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太一_はじまりの話-5

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朱里と偶然の再会を果たしたのは大学二年の夏、互いの大学のちょうど中間地点にある飲み屋街だった。

この一年半の俺はというと、ありがたいことに相変わらず人に好かれる毎日で、彼女がいた時期もあった。新しい生活で古い感情が次々と心の奥底へと収納されていき、朱里への想いも昇華できているつもりだった。

けど朱里に再会したことにより、本当に“つもり”なだけだったことに気づく。



「あれ…―――っはは!太一じゃん!」



久しぶり、だとか、元気だった?と火照った顔で微笑む朱里。アルコールの力なのか、いつもよりも表情がやわらかく感じた。言葉数も多い。だが、俺の耳は朱里の声をうまく聞き取ってはくれなかった。

朱里の声を聞いた瞬間、笑顔を見た瞬間、世界が高校時代に戻ったような錯覚に陥ったからだ。

俺は学ランを着ていて、朱里も白紺のセーラー服を着ていて。少しだけ埃っぽい教室に、古びた机と椅子。日付と日直の名前だけが書かれた、放課後の黒板。窓際に座り生ぬるい風を浴びる俺達。夕焼けで溶けるのが速い、一本六十円の安いアイス。今よりも髪の短い、少し幼さの残る朱里が笑うんだ。ばーか、って。眉間と鼻の間に皺をよせて、無邪気に。



「…太一?」

『―――あ、ワリ。びっくりしてた。』

「はは!声かけたのそっちじゃん。こっちが驚いたっつーの。」



なんだよ、これ……

話しかける時に左胸のあたりが震えた。指先一つ動かすだけなのにからだが強張る。会うことが嬉しいのと同じくらい不安で怖い。

朱里に会った途端に自分のペースを保てなくなるのは、嬉しい反面くやしい。

いつまで引きずってんだ、俺は……



(結果なんてどうでもいい。今日こそ告おう。ケリつけよう。)



そう思ったのに。

その思いは、居酒屋を出てもまだ飲み足りないとうちで宅飲みすることになった帰り道で打ち砕かれることになる。笑う朱里の、情けないんだけどさー、という言葉をきっかけに。




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