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〈四季の舘〉祈り〜櫻並木の唄〜
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〈四季の舘〉祈り〜櫻並木の唄〜-3

なにもこんな所を撮らなくても・・・

「大丈夫、大丈夫。写真はちゃんとあげるから」
「そうじゃなくて、」
「それより、そろそろミサの時間。早く教室に戻らないと、置いてかれるよ」
「えっ!?」
慌てて時計を見る。八時五分。
「うそっ!」
 急いで戻ろうとするところを、咲子さんが袖を引っ張って止める。
「走らない。マリア様が見ているわよ」
「でも、」
「マリア様に一言言ってから、行きましょう」
マリア様の像の前で手を合わせる。
「それは、」
ー言い訳なのでは?
 しぶしぶマリア様の像の前で手を組む。
ーごめんなさい。走ります。

「さ、行きましょうっ」
元気よく駆け出した。


「いやぁ、間に合って何より」

無事教室に着き、ミサが終わった後咲子さんが笑いながら話しかけてきた。
「・・・本当に・・」
ぐったりと椅子に座り込む。
 疲れた。
「何かありましたの?」
心配そうに千香子さんが尋ねてきた。
「いいえぇ、何もー」
にこやかに咲子さんが答える。
「アナタは平気そうだけれど、絢華さんは苦しそうよ」
「!!いいえっ、大丈夫っ。平気!」
慌てて返事を返す。
このままだと、走ったことがバレてしまいそうだ。
「それより、千香子さん。お姉さまとの用事って何だったの?」
話題を変える。
「え?」
突然話題が変わり、戸惑うように見る。
「何なにー。何の話し?」
がばっと咲子さんが食い付いてきた。
「なっ、何でもありませんわっ」
「えー何で。少しくらい良いじゃん。けちぃ」
「何でもありませんっ!それより咲子さん、言葉遣いを改めなさいっ」
「えー」
「『えー』じゃありませんっ」
怒ったように千香子さんが咲子さんを見る。
 私も思っていたのだが、咲子さんの言葉遣いは幼稚舎から桜蘭に通っていたとは思えない。桜蘭以外でならば普通だが、桜蘭ではやっぱり違和感がある。
「気にしない気にしない」
にこにこと笑い、流される。
「椿姫様も、何故あなたを選んだのかしら・・・」
ふぅー、と千香子さんが溜め息を着く。

椿姫様は、咲子さんの『お姉さま』で冬姫様の妹だ。名前を、桐榮美狭子(キリサカミサコ)さま。千香子さんと咲子さんが一緒にいるのは、お姉さま同士の繋がりにありそうだ。

「お姉さまは、こんな私が良いのよぉ」
ほほほほほっ、と咲子さんがわざとらしく笑う。
「・・・・」
千香子さんが咲子さんを睨んだ。






「絢華さん、大変、大変っ」
昼休みに、クラスメイトが慌てて駆け寄ってきた。
「え!?」
何?何かしたっけ!?
「櫻姫様がお呼びしているのっ」
「・・・へっ?」
『櫻姫様』つまり、『春姫様』の妹だ。
そんな人が、私に?
「早く、早くっ」


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