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あまこい
【学園物 官能小説】

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さざ波-2

ジュンは一ヶ月の停学処分を受けた。本来なら退学であったが、その喧嘩には部落差別が関わっているのを考慮し、ジュンは退学を免れた。だが喧嘩し、そこで剣道技を使ったことの罪は重く、ジュンが一生懸命に取り組んだ剣道部は退部となった。剣道部員のエースと呼ばれたジュンの退部は部員達に衝撃を与えた、そして学校全体がこの騒動で沸き立っていた。

 学校が終わり佳奈はジュンの家を訪れた。

「あら佳奈ちゃん、どうしたの珍しいじゃない」

佳奈は気まずそうに

「タマお姉ちゃん、ジュンちゃん居ますか?」

「あー、ジュン坊ね」

環は謎が解けて晴れた顔をした。

「どうぞ上がって、ジュンは部屋に居るよ、後でお茶持っていくね、さぁ、部屋に行った行った」

「あっ、どうも、そんなに気を使わないで下さい」

佳奈は環に押されるがままにジュンの部屋に向かった。
「………」

佳奈はジュンの部屋の前で、もどかしく戸惑いながらもノックをした。

コンコン

「なに?」

ジュンの声だ。佳奈は一気に緊張が溢れ、固まり、声が出せなくなった。

「タマ姉?」

ジュンはそう言いながら部屋のドアをあけた。

「…………佳奈」

ドアの前に立つ佳奈にジュンはビックリした表情をした。

「入りなよ」

ジュンはそう言うとドアを大きく開けた。

「うん」

佳奈は小さく頷くと、ジュンの部屋に入っていった。

ジュンの部屋に入るのは久しぶりだ、でも昔と変わらない、佳奈はそう思いながら、勉強机の椅子に腰掛けた。

沈黙が続いた。

切り出したのは佳奈の方からだった。

「何か言ってよジュンちゃん」

ジュンはベッドに座るとおでこを手で摩りながら言った。

「何って、僕は何も……」

ジュンの顔は堀田との喧嘩で顔中アザだらけであった。
佳奈はそんな痛いげなジュンの顔を見詰めながら呟くように言う。

「……ありがとう」

ジュンは、何も言わずただ頷いた。

ガチャ

「あら暗いのねー」

環が紅茶と駄菓子を持ち部屋に入って来た。

「タマ姉、そんなのいいのに」

「あら、それは佳奈ちゃんに失礼よ、佳奈ちゃんはお客さんなんだから」

「あっそうだね、ごめん」

その言葉に佳奈は慌て環に言った。

「あっ良いんです。私はそんなつもりで来ていないので」

「そう、それってジュン坊の喧嘩の事?」

環は茶化すように佳奈に聞いた。

「違うよ」

ジュンが佳奈に答えさせない形で環に言うと続けて言う。

「タマ姉、もう用がないなら出ていってもらえる?」

環はつまらなそうな顔をすると、「はいはい」と流すように返事をしジュンの部屋を出ていった。

ジュンは環が部屋を出ていくとため息を吐き、佳奈に紅茶を、そっと渡した。

佳奈は紅茶を手に取り、カップを見ながら言った。

「ごめんね、気を使わせちゃって」

「いいよ、気にしないで」

佳奈はそんなこと謝る為に来たんじゃないと思いながらも、ジュンに切り出せない自分がふがいなく感じていた。

「今日、学校に行ったの?」

「うん、行った。遅刻してだけど……」

「そう」

「ジュンちゃんは、いつ学校に来れるの?」

「一ヶ月過ぎかな、反省文を書いてそれが受理されたら学校行って良いってさ」

「もう部活は行けないんだよね」

「うん、でも別に気にしてないよ、剣道は高校だけしか出来ない訳じゃないし、それにもう剣道を逃げ道にしたくないから」

「逃げ道?」

「あっ、気にしないで、ただの一人ごとだから」

「一人ごと……、
でもそしたらジュンちゃんと一緒に帰れるね」

「佳奈は美術部があるだろ」

「そうだった、でも私も辞めるよ。そしたら帰れる」

「そんなに気を使わなくていいよ、僕は部活が無くなったからといって落ち込んでないし」

「そう、……ごめん」

佳奈は俯き、何も言わなくなった。
そんな佳奈にジュンは声を欠けるて佳奈はガラガラの声で小さく呟いた。

「私……何にも出来ない……」

「え?」

「私、ジュンちゃんに助けてもらったのに、何も出来ないよ、お礼や謝罪じゃ足りないし、ジュンちゃんの学校生活ぐちゃぐちゃにしちゃたのに私は普段通り学校に行って部活も続けられて、私……私、ジュンちゃんにどうしたら返せるの?
何も思いつかないよ」

佳奈はぽろぽろと涙を流しながしていた。
ジュンちゃんはそっと優しく言った。

「何もしなくていいよ、ただ今まで通りの佳奈でいて、いつも笑っている佳奈でいてくれたらそれでいいよ」

「でも」

「堀田の事は僕が勝手にやったことだ、佳奈のせいじゃない、それに退部になったのだって剣道を喧嘩で使ったからだ、すべて僕が勝手にやったことだよ、佳奈が気にすることなんか何一つないよ、
今まで通りの佳奈でいてよ、ね?」

「ジュンちゃん……」

佳奈は涙でぐちゃぐちゃになりながらジュンに

「ありがとう」

と、深くお辞儀をした。



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