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天人異聞伝
【ファンタジー 官能小説】

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シェンファン姫-1

だが、数日するとファン・リーリは今度は気品のある少女を連れて来た。
ユエ国の後宮一の麗人と歌われたシェンファン姫である。
だが、彼女はイーゴアの出現で胃を煩い食欲がなくなったという。
その頃には天人はすっかりこの国の言葉を思い出していた。
ファン・リーリに言い含められてここまでやって来たシェンファン姫だったが、天人の姿を見て嫌悪の表情を浮かべた。

「お前が私の体に触り、あの田舎者のイーゴアよりも美しくできるというのか?
シャンレンどのならともかく、年若いお前が? 
私を誰だと思っているのだ。ユエ国王宮の貴族の娘、シェンファンなるぞ」

少女は身につけたきらびやかな宝石や絹の衣服をちらつかせ、自分の身分の高さを強調した。
彼女の肌は透き通るように白く髪の毛は艶やかに輝いていた。
ところがその間、ファン・リーリはシェンファン姫を置いてさっさと帰って行ってしまったのだ。

シャンレンは当惑しているシェンファン姫に言った。

「わしは嘗てあなたほど美しい女人は見たことがない。
イーゴアでさえ、ここに来たばかりのときは、あなたの足元にも及ばなかった。
だが、天人とまぐわったためにあなたを脅かすほど美しくなった。
天人はあなたの純潔を奪わずにまぐわい、あなたを更に美しく強くすることができる。
鏡を見ましたか?あれほど美しかったあなたなのに、今は紅の花びらのような唇はかさかさに荒れて、絹のような肌が吹き出物に覆われている。
あなたの欠点は神経の弱さなのです。
心が繊細すぎて、それがあなたを逆に苦しめる。
一度だけ天人とまぐわいなさいまし、さすれば元のあなたの美しさになります。
そして、二度と胃を痛める事のない強靭な心を持つことができるようになるでしょう」
「何故、私と会ったのが今日が初めてなのに、前にも私を見たような虚言を言われるのじゃ? 老師……。」
「私は魂を千里飛ばして、遠くのものを見聞きすることができるのです。」
「それでは、今イーゴアは何をしているか、お分かりか?」
「はい、あの者は行儀作法や言葉遣いを習って、どんどん上達しております。」
「おのれ……! でもやはり、この者とまぐわわなければならないとは決心がつかぬ」

気品の高いシェンファン姫は若者の美貌に内心惹かれながらも、それだからこそ羞恥を覚えて同衾を強くこばむのだった。

「まぐわいなさいませ、シェンファン姫さま」
「いやじゃ。恥ずかしいのじゃ。もう後宮に戻らずとも良い。
いっそ崖から身を投げてこの命を終えようか」
「何を馬鹿なことを。後宮では王族にお手つきになるのを待つ身だというのに。
何故こだわるのですか?
ははあ、さてはこの天人に心惹かれて、虜になるのが恐ろしいのですな」
「ぶ・・無礼な。私がそのようなことを思う筈が・・」

そのとき姫の心に直接語りかける声が聞こえた。

『姫さま……怖がらないでください。私は今心で語りかけています。』

シェンファン姫は驚いて絶句した。そして恐る恐る心の中で天人に話しかけてみた。

『今……お前が私に語りかけたのか?』

シャンレンはその様子で何を悟ったのか大きな声で言った。

「さて、わしはしばらく洞窟の中に入って瞑想し四海を巡ってくるとする。
あまり大きな物音を立てぬようにな、瞑想が破られても迷惑じゃから」

そして洞窟の奥にと入って行った。天人は話を続けた。

『シェンファン姫さま。私とまぐわっても破瓜の痛みはありません。
それどころか破瓜すらもおきないのです。
まさしく夢のように過ぎて行き、感じるのは心地よさと感極まる体の喜びのみです。
それだけでなくあなたのか細い神経を少しだけ強くして心の悩みが体の病にならないようにすることができます。』
『それだけでなく、いっそのこと心が悩まないようにしておくれでないかえ。』
『けれども、悩まない人間はこの世にはおりません。
そんなことをすればあなたの持っている優しい心までも失ってしまいます。』
『後宮にいる女として、優しい心ほど邪魔なものはない。
私の今までの苦しみは他の者たちに気兼ねして息を詰まらせていたためじゃ。
そうしてくれなければ、お前とはまぐわうことはない。
約束してくれれば必ずまぐわおうぞ』

シェンファン姫は天人に何か無理を言って、それを聞いてくれたらまぐわっても良いと、交換条件を出すことで自分の自尊心を満足させたかったのかもしれない。
だが、天人には相手が伝えようと発する言葉以外は読み取ることはできない。

『わかりました。それで承諾して下さるなら、必ずそう致します。
あなたには何物にも動ぜず思い悩むこともない鋼のような強い神経を授けることを約束致します。』

その後天人はシェンファン姫の気が変わらないうちにと、湯船に沸かした湯を注いで湯浴みをするように言った。
しかしシェンファン姫は生まれつきの高貴な姫のためお付きの者がいなければ何も出来ない。
天人は仕方なく、嫌じゃ嫌じゃと泣きじゃくる姫の装身具や絹の衣を脱がせて裸に剥き全身を洗ってやった。
姫は陰部を若者にさらけ出すことを特に恥じて手で覆い隠したが、それでも纏足の布に手をかけられたときは最大の辱めを受ける者のように激しく抵抗した。
けれども纏足を手で覆い隠すには恥ずかしい体勢をとらねばならず、目を閉じて観念し湯船に仰向けに横たわった。
後宮の女人にとって纏足は最も不潔な場所で垢が溜まってきつい匂いもする。
それ故、最大の恥部であり、陰部をさらけ出すよりも屈辱的なことなのである。
 


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