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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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やっぱすっきゃねん!VR-6

 7回表、大谷西中の攻撃。
 3点を奪った直後の守備。優位な試合展開をするためにも、この回は凡退に抑えたい。
 逆に1点でも与えてしまうと、相手の闘争心を煽ってしまう。

 最も大事なイニングだ。

 7番バッターが左打席についた。達也は、足の位置をじっと確かめる。

(要注意だったな)

 前の2打席はカーブで仕留めた。当然、その時の配球も考慮して打席に入ってるだろうし、先頭バッターとして、是が非でも出塁を狙ってるはずだ。

(目先を変えてみるか)

 達也は、初球の入りにカーブを選択した。
 普通、バッターとは、追い込まれるまで真っ直ぐにタイミングを合わせるもので、まして初球の変化球には手を出し辛い。
 もし、打ってきたとしても、前の打席の様子ならヒットにならないと思った。

 直也はサインに頷き、振りかぶった。上げた左足がショートの方を向き、上体が強くねじれる。
 背番号の一部が、達也の目に触れた。一瞬の間をおいて、曲げた左足が空を蹴り、キャッチャー方向に踏み出した。
 ボールを持つ右手を、肩の高さまで引き上げた。直也の目は、ミットだけを見据えている。
 右腕がムチのようにしなった。リリースの瞬間、ボールに強いスピンがかかる。

 腕の振りとは対象的に、ボールはふわりと舞った。
 狙いはストライクから低めのボールになる球だった。だが、高めに浮いてしまった。
 バッターはステップした左足を踏み込み、バットを強振した。

 かん高い金属音が鳴った。
 打球は、セカンドの頭上を越えてライトの前でバウンドした。

「くそッ!」

 直也が悔やむ。先頭バッターを出してしまった。
 今の一打で、大谷西中のベンチや応援団が一斉に活気づいた。

 次の8番バッターは、あっさりバントを決めた。
 1アウト2塁。先ずは1点という算段なのだろう。

 9番バッターが右打席についた。ラストバッター、イコール最も打力の無いバッターとは限らない。
 最近は、1番に継いでチャンスを拡げる役割を担ってる場合が多い。

 達也は、内角の真っ直ぐを要求する。ランナーの進塁を阻止する配球だ。
 初球、2球目を同じコースでカウントを稼いだ。勝負球は内角低めのスピリットと考え、1球見せ球を挟もうとした。

 外角高めへの真っ直ぐ。

 直也はサインに頷いた。
 セットポジションに入った。グラブで隠した右手は忙しなく動き、ボールの縫目を確かめる。
 投球動作に入った。踏み込んだ左足と共に、身体が深く沈み込む。

 その時だ。左足がマウンドに着地する寸前、スパイクの爪が窪みに引っかかった。


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