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名門女子剣道部・愛花
【同性愛♀ 官能小説】

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剣道部の暗雲-4

 くしゅん!
 翌朝。愛花が肌寒さを覚え、くしゃみをしながら目を覚ますと、目に入ってきたのは見知らぬ天井だった。
 ここはパパとママの寝室。昨夜はこのセミダブルのベッドで眠ったのだ。
 隣に寝ていたはずのママはもういない。
 昨夜のことは思い出すだけで恥ずかしくなる。ママにあんなことやこんなこともされてしまった!
 まるで夢のような気がしたが、優しく愛撫された時の感触を身体がはっきり覚えている。
 愛花は自分が何も着ていないのを思い出し、毛布にくるまったまま、そっと部屋の外に顔を出してみた。

「…ふんっ! …ふんっ!」

 どこからか、ママの声がする。一体何をやっているのだろう?
 リビングに出てみると思いがけない光景が愛花の眼前に広がっていた。志津が袴姿で庭に出て、素振りをしているのだ!
 ほんのりと汗を浮かせて志津は力強く竹刀を振るっている。その姿はとても凛々しく、堂に入っていて、明らかに初心者ではないと愛花にもわかった。

「あら? 目が覚めたの? もう少し寝ていればいいのに」

 志津は愛花に気づくと素振りをやめ、カラカラとサッシを開けてリビングに入ってきた。

「ちょっと待っててね。汗を拭いたら朝食を作るから」
「ママ…一体どうしたの? その恰好…」
「私、今日から剣道部の臨時コーチに就任します」
「ええっ…?!?!」

 あまりの展開にあっけにとられてしまい、愛花は絶句した。

(それって一体…どういうことなの?!)

「今日は学校をお休みしなさい。あんなことがあった翌日だもの。あなたはゆっくり休みなさい」
「で、でも…」
「いいのよ。全部私に任せなさい」

 愛花の頭の中はたくさんの疑問符がぐるぐると駆け巡っていて、一体何から聞けばいいのかわからない。まるでフリーズ状態だった。

4.
 その日、愛花のいない剣道部では重大な発表があった。臨時コーチが来るのだという。突然の話に玲も美貴も驚いていた。
 練習前に全員の前で顧問の沖直見から紹介された。

「本日から練習に参加する臨時コーチを紹介します。笠倉志津さんです。全国大会優勝の経験もある我が剣道部の大先輩です。皆さん、失礼のないように」
「笠倉です。皆さん、よろしくお願いします」
「お願いします!!」

 小柄な志津は言葉少なだったが、皆と同じ練習メニューを楽々とこなし、乱稽古でその存在感は存分に発揮された。
 3年生全員が本気でかかっても、志津からは一本も取れないのだ。
 あっという間に突きを払われ、小手を打たれたり、面を打たれたり。まるで大人と子供の実力差だった。
 玲や美貴でさえも易々と打ちすえられてしまうのを見て、一同目を丸くした。

「笠倉コーチもふんどし締めてるんですね! カッコいい!」

 更衣室で皆と一緒に着替える志津のお尻を見て、1年生たちはきゃあきゃあと騒いだ。
 身体の発達しきっていない中学生と違い、子供を産んだ女性の身体にはふくよかな丸みがあり、少し垂れ下がったお腹やお尻の肉の間に豆絞り柄のふんどしがみっちり食い込んでいる。
 玲や美貴のどこかボーイッシュなふんどし姿と違い、独特の倒錯感があり、これはこれでとてもよく似合っているのだ。

「ふんどしはね、侍の下着なの。これを締めることで身も心も侍になり切るのよ」
「初めて締めた時どんなかんじだったんですか? 恥ずかしくないですか? 食い込んだりしませんか?」

 すっかり志津ファンとなった1年生が、見事なお尻を食い入るように見つめながら質問する。ふんどしを締めるのを恥ずかしがり、未だにノーパンで練習をこなす子たちにはひときわ興味深いらしい。

「そうね…。初めて締めてもらった時はかなり恥ずかしかったわ。憧れの先輩の前でパンツを脱ぐ時なんかすごくドキドキしたの」

 志津の余裕のあるどこか色っぽい物言いに、近くで聞いていたつかさでさえもドギマギしてきた。

「でも練習に打ち込むうちに忘れちゃう。だってそんなこと気にしてたら剣道はやれないでしょ? それに…食い込むって気持ちがいいのよ。ふふっ…」

 それを聞いた1年生たちから黄色い歓声が上がった。志津の穏やかで優しい口ぶりには独特の魅力がある。甘えたい中学生にとってはまさに『理想のママ』のイメージなのだ。

「今度わたし達にもふんどしの締め方、教えて下さい!」

 志津を取り巻く1年生や2年生たちの騒ぎを見て勝田八千代が一喝した。

「こらっ! コーチをあまり困らせるんじゃない! 大変失礼いたしました。後でよく注意しておきますので」
「いいのよ。あまり気にしないで。さぁ、みんなでシャワーを浴びましょ」
「はいっ、コーチ!」

 いつもは厳しい先輩たちに圧倒されがちな1年生たちの声が元気よく響いた。
 志津のどこまでも穏やかな対応とさわやかな笑顔に、お堅い八千代でさえも胸の動悸を抑えられなかった。

「コーチって、愛花ちゃんのお母様なんですね!」

 一緒にシャワーを浴びながら、1年生の西野春香が聞いてきた。

「ええそうよ。今日は具合が悪くてお休みしてるけど、復帰したらよろしくね」
「愛花ちゃん…大丈夫ですか? 昨日はその…ちょっと…主将が…」

 春香は、昨日の愛花がどんな状態で部室に運ばれてきたのかを言いづらそうだった。

「大丈夫。うちの娘は強い子なの。あのくらいじゃへこたれたりしないわ」
「そうそう。愛花は根性あるからねっ!」

 髪がシャンプーで泡だらけのまま脇からつかさが割り込んできた。

「おばさま、今日これからお見舞いに行ってもいいですか?」
「ええ、来てちょうだい。私は用事があるから帰りは遅くなるけど、お金を預けるから愛花に何か甘いものでも買ってあげて」
「任しといて!」

 つかさがどん、と胸を叩くふりをした。


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