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名門女子剣道部・愛花
【同性愛♀ 官能小説】

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運命の出会い-1

1.
 あたたかな春の朝。気持ちのいい風が吹きぬける。
 その日は、身体の奥がむずむずしてじっとしていられないような日だった。

「きゃ〜チコクチコク〜!」
「あ〜ん! つかさちゃん待ってよ〜!」

 通りの向こうから2人の少女が息せき切って駆けてくる。

「だから言ったのにー! 初日からこれじゃ先が思いやられるよ!」

 後からついてくるショートカットの少女がそう叫んだ。
 彼女の名前は笠倉愛花。先を走っているのは親友の青木つかさ。
 つかさは愛花が小学校4年の時にこの土地に引っ越してきて以来の親友だ。
 普段からおとなしく控えめな愛花は、元気一杯なつかさにいつも振り回されてしまう。
 2人は今日から中学生。大人の仲間入りだ。制服姿がどこか気恥ずかしい。
 愛花はこれから始まる学園生活にわくわくして前夜はよく眠れなかった。大事な始業式の日だというのに。

「ごめんごめん、明日から気をつけるから!」

 つかさが振り向きもせずにそう言い放ち、鋭いターンを決めて曲がり角を凄い勢いで駆け抜けてゆく。
 必死に追いかける愛花は自分も曲がろうとした瞬間、向こうから現れた人影が目に飛び込んできた。

(危ない! ぶつかるっ!)

 愛花は思わず目をつぶった。

 ガシッ!

 おそるおそる目を開けると、愛花は1人の少女にがっちりと抱きとめられていた。
 頬に当たる柔らかな胸の感触が心地いい。
 ふわっ…と甘い匂いが鼻孔をくすぐる。
 幼い頃、母親にぎゅうっと抱きしめられて幸せな気分に浸った時のことを思い出した。

(いいえ、違うわ。いつかどこかでこんなことが…)

 とても懐かしい気がして、愛花はなんとも形容しがたい気持ちに包まれていた。
 きっとこういうのを「デジャヴ(既視感)」と言うのだろう。

「危ないわね…」

 少女は抱き止めた愛花をしげしげと眺めると、こう言った。

「うちの制服ね。新入生?」

 その少女は先輩らしかった。
 愛花よりもずっと背が高い。
 透き通るような白い肌。
 鼻筋の通った端正な顔立ち。
 きりっとした眉毛。
 意志の強そうな瞳。
 ウェーブのかかった栗色の髪は後ろで束ねている。
 そして左肩には大きな黒い革ケース。

 質問されているのに、愛花は少女に見とれてしまい、答えることをすっかり忘れていた。

(なんて綺麗な人……先輩かしら?)

 大きく目を見開いた愛花は、ぽかんと口を開けたまま、ただただ少女の顔をじいっと見つめていた。
 少女がふっと手を離すと、愛花はへなへなとその場に座り込んでしまう。

「ついてらっしゃい。こっちの方が近道よ」

 少女はそのまますたすたと歩いていく。
 追いかけようと愛花がよろよろと立ち上がった瞬間、今度は急に強い風があたりを吹きつけた。

 ぴゅ―――っ!!

 突風にあおられて再びよろけた愛花は、思わず道路に手をついて前を見上げた。
 前を行く少女のスカートが一瞬ふわりとまくれ上がる。
 少女はあわてて後ろ手に押さえたが、真後ろ、しかも低い位置にいた愛花の目にはスカートの中身が全部見えてしまった。
 それは衝撃的な光景だった。
 少女の丸みを帯びた豊かなヒップには、きりりとふんどしが締め上げられていたのだ。

(女の子なのに……ふんどし?)

 抱きしめられた時の不可思議な感覚。
 鼻孔をくすぐる甘い匂い。
 ふかふかのベッドに身を沈めた時のような柔らかな感触。
 思わず見とれてしまうほどの謎めいた美貌。
 目に眩しいほど白いお尻。
 そして双臀の割れ目にがっちりと食い込んだふんどし。

(見てはいけないものを見てしまった!)

 そういう思いと共に様々なイメージが頭をちらつき、それがぐるぐると駆け巡って、愛花は軽いめまいを覚えた。
 急がなくちゃ。先輩を追いかけようと、愛花はもう一度立ち上がった。
 思えば、これが運命の出会いだったのだ。
 この日を境に愛花の人生は変わってしまった。
 汗と、涙と、涎と、尿と淫汁にまみれた、狂おしい愛欲の炎に身を焦がす日々の始まりだった。

2.
「愛花〜っ! ひっどいじゃない!」
「…ごめん。でもつかさちゃん、私のこと置いてどんどん先に行っちゃうんだもん…。先輩とぶつかってあたふたしていた時には、もう見えなくなってたんだよ」
「親友のあたしに声かけてくれないなんてさ! あ〜あ、今日は最悪の日だったなー!」

 結局、謎の先輩について住宅の間にある路地裏のような近道を通り抜けた愛花は間に合って、全力疾走したつかさはギリギリ間に合わず遅刻。風紀委員に締め出されて生徒指導の先生にお説教をくらった後、ようやく始業式に加えてもらったのだ。
 つかさが口で言うほど怒っていないのはすぐにわかったが、親友を置いて自分だけ上手くやったのだ。とにかく愛花は平謝りに謝った。親友のご機嫌をとらなければ。

「あたしがおごるからさ、駅前でハンバーガー食べてこ?」

 校門を出て、2人は駅まで10分ほどの道のりをとぼとぼ歩いていた。
 時刻はもうお昼過ぎ。お腹はぺこぺこだ。
 愛花たちが入学したのは、鎌倉郊外にある私立星月女学院。大正モダニズム華やかなりし頃に設立された由緒正しい名門校だ。中学・高校・大学があり、一貫教育を行っている。
 濃紺のセーラー服に3本ラインが入ったオーソドックスな制服は創立以来変わらない。最近の流行からは外れているが、清楚で落ち着いた雰囲気をかもし出していた。800年の歴史を持つ風光明媚な古都を行く少女たちは皆、輝いている。
 そんな制服姿に憧れて、去年この学校を受験したいと愛花が言い出した時、母親も実はここの卒業生なのだと聞かされた。初めて聞く意外な事実を、とても不思議に思ったものだ。


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