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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』-5

通信にじっと耳を傾けているらしい隊長の次の言葉を、隊員達はじっと待つしかない。
ごくり、と、誰かが生唾を飲み込む音がする。
エリックは微かに、銃声のような音が聞こえてきたような気がした。
数十キロは離れているのだ。聞こえる筈が無い。
落ち着け……そう自分に言い聞かせ頭を振り、エリックは再度集中しようと試みる。
その瞬間。
「全員、撤退!」
 小隊長の声が響いた。
瞬間、小隊長を含めた隊員達の機体は一斉に元来た道を戻り始める。
ただ一人、エリックだけが状況を掴めず遅れて走り出す。
「相手側に雷神が居る、コーレイ中隊も勢力の半数を失い撤退を開始した。こちらも探知されたらしい。……作戦は失敗だ、ぼやぼやせずに撤退急げ!」
 その言葉は、更にエリックを呆然とさせた。
「……そんな…………」
 エリック機の足が止まり、呆然と立ち尽くす。
「何をしている?雷神がこっちに向かっているらしい、急げ!置いて行くぞ!」
 小隊長の言葉に正気を取り戻したエリックが見てみると、既に他の仲間たちは木に紛れて見えなくなってしまっていた。
急に心細くなって、エリックは慌てて仲間達の後を追いかける。
その時、けたたましいプロペラ音が後方上空から迫って来た。
「来たぞ!逃げろ!」
 プロペラ音は、ジュマリアが独自に開発している飛行型ワーカーの音だ。
通称S型ワーカーである。ジュマリア独自のものなので、型式名は不明。
エリックは頭の片隅でそんな事を思い出しながら、必死にペール?を走らせる。
だが森の中という事もあって、なかなか速度がでない。そうでなくとも飛行型には敵わないのに。
そして、プロペラ音がすぐ上まで迫って来た。
(くそ、逃げ切れない!……だが森の中にいればS型は手出し出来ない筈……!)
そう思った瞬間、目の前で森が開けた。
どうやら夢中で走っている内に、方向を見失っていたらしい。
すぐ後ろで、大地に衝撃が走る。
そして頭上を通過して行くプロペラ音。
思わず振り返ると、そこには白銀に輝く一体のワーカーが居た。
恐らく、S型が掴んで運んだのだろう。
白銀の機体に光る真っ赤なカメラアイが、既にエリックを捉えている。
その機体が手に持ったた武器の銃口は、しっかりとエリックを狙っていた。
今抵抗しても、勝てる見込みは皆無に近い。
「くそぉぉおおおおおお!」
それでもエリックは、右腕に持たせているライフルを振り上げさせる。
それを察知したのか、白銀の機体が引き金を引こうとした瞬間。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………
突然地鳴りがし、足元が崩れる。
白銀のワーカーが落ちてきた衝撃で、地盤が一部崩れたらしい。
「!?うわぁぁぁあああああああぁ……!」
エリック機も白銀の機体も体勢を崩し、吸い込まれるように落ちて行った。


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