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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』-19

「ようこそ、これがあたしのワーカー『ミネルグ』よ。」
「狭いな……」
「我慢して。あたし用なんだから。」
 クリスのワーカー『ミネルグ』の中は、ペール?のそれ以上に狭かった。
クリスの言葉通り彼女の身長に合わせてあるらしく、頭一つ分背の高いエリックには辛い。
「じゃ、いくわよ!」
 クリスはそんなエリックにも構わず、ミネルグを発進させる。
ぐっとGがかかり、エリックがクリスに押し付けられる。
エリックは少しどきどきしてしまったが、クリスは操縦に集中しているようだ。
いや、よく見れば僅かに頬が赤い。
意識されているのだろうか。こんな事態なのに、ついそんな事を考えてしまう。
「ほ、ほら、さっさとあんたのワーカーとりに行くわよ。」
「あ、ああ。じゃあよろしく頼む。」
 中でそんなやりとりをしつつ、ミネルグはぶち抜いた建物の横穴を戻る。
その間に銃撃もあったが、小型ロボットの貧弱な銃などワーカーの装甲には通じない。
外に出たミネルグは立ち上がると、ペール?が置いてある場所へと歩き出した。
またまた小型ロボット達が湧いてくるが、それらを踏みつけて先を急ぐ。
そのスピードは、エリックのペール?とは全く別物だ。とにかく早い。
そしてミネルグは、ペール?の元へとたどり着いた。
ミネルグはエリックが出易いように、膝をついて待機する。
「あ、明かりが点くと変わるもんだな……」
「ほら、これでしょ。さっさと乗り換えてよね、もう。」
 気を紛らわそうと関係ない事を言うエリックに、まだ顔を赤くしたままのクリス。
あまり緊張感が無い。ワーカーに乗っている限りは安全だからだろうか。
しかしコクピットの扉を開こうとした時、クリスは真剣な顔でエリックを見た。
「気を付けてね。あんたはミネルグから降りたらすぐにペール?に乗って。余計な事は考えずにそれだけ考えてれば良いわ……あんたはあたしが守るから。」
 真剣なクリスの瞳を見つめ、エリックは微笑する。
「ああ、信じてるぜ相棒。それじゃ、行ってくる。」
「うん、行ってらっしゃい。」
 クリスに親指を立ててみせ、エリックは開いた扉から外に出る。
素早くミネルグを降りるとそのままペール?を目指し、走り出した。
ワーカー武器の重い銃声が響いたが、構わずにペール?に取り付く。
ワーカーのコクピットは背面部にあり、そこまでは機体の表面に出来た窪みを伝って上る。
エリックはかなりのスピードで上り終えると、外からの操作で扉を開いた。
「よし、大丈夫だ!」
 コクピットに入りながらクリスに通信で告げると、シートに体を固定する。
「良かった…じゃあ、いくわよ!」
 クリスの元気な声が響き、ミネルグが先導するように走り出す。
「ちょ、ちょっと待て、もう少しゆっくりにしてくれ!」
 またもや情け無い気がしたが、エリックは機体のせいだと割り切る事にする。
「仕方ないわね……スピード落とすから、ちゃんと着いて来るのよ?」
 台詞の割には穏やかな口調で言うと、クリスはミネルグのスピードを落とす。
「ああ、すまない。……それにしても、際限なく湧いてくるな、こいつら。」
 エリックの言うこいつらとは、小型メカの事だ。先ほどから、建物の中や物陰からぞろぞろと湧いて出て来ているのだ。
ワーカーに対する攻撃力は皆無に近いが、生身であったらかなりの脅威だったろう。
「まぁ、ほっといて先に進みましょう。ワーカーに乗ってる限りは安全だわ。」
 足元にいる小型ロボットをミネルグに踏ませながら、クリスは言う。
「そうだな…いちいち倒してたら弾も保たない。」
 同意し、進むエリックの駆るペール?の足元で、また一台潰れる。
小型ロボットは、悲しい程ワーカーに対して無力だった。
しかしその時。
「!?クリス、避けろ!!」
何かを発見したエリックが声を掛け、ミネルグが素早い挙動で右へと跳んだ。
そして一瞬遅れてそこに爆発が起こる。
「……どうやら、ザコばかりじゃないようね……」
 舌打ちするクリス。彼女は今の攻撃の主を睨みつける。
攻撃の主…ワーカーよりやや小さい二足歩行メカは、武器となっている腕を振り上げ、再びミネルグに狙いを付けた。


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