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ゼビア・ズ・ストーリー
【ファンタジー 官能小説】

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カウントダウン-9

(もしかして……精霊……か……?)

 どうやらアースにしか見えていないらしく、目線のおかしいアースを心配したケイが手を目の前でヒラヒラさせた。

「アース?」

「あ……ああ……」

 アースは我に返って体を起こすために右手を動かそうとして思い出す。

「……そうだった……右腕ねぇんだった……」

 白い刃に切り取られた……左手で触ってみると包帯が巻かれていた。
 そのまま右目にも手をやるとそこにも包帯。

「後、右脇腹と右脚にかなり深い切傷があるぜ……何があったんだよ?」

 顔をしかめているケイに、アースは自分の記憶を辿りながら話す。
 北の海が凍っていると聞いたので見に行くと、魔獣率いる魔物がファンに向かっていた……その魔物にやられたのだ。
 攻撃を受けた時に、雷系だとわかったので咄嗟に相性の悪い海の水を使って壁を作ったまではいいのだが、魔力を使い果たし飛ぶ力がなくなって海に落ちた……所まで覚えている。

「海に落ちて正解だったぜ?凍ってきてるから水温がかなり低い。おかげで仮死状態だ」

 だから失血死しなかったんだ、とケイの後ろから髭面の男が声をかけた。

「あ、俺の叔父さん。船医なんだ」

 良く陽に焼けている筋肉を持つ50代ぐらいの男……白髪混じりの茶色い長めの髪を無造作に括っている。

「ゲイッシュだ。とりあえず応急措置しかしてねえ。お前ぇさん魔導師なんだろ?魔法かなんかかけるんなら縫わねぇ方がいいかと思って傷口も止血してるだけでそのまんまだ。縫った方がいいなら縫うぞ?」

 ゲイッシュは話ながら麻袋に藁を詰めた簡易クッションをアースの背中に入れて座らせた。

「いてて……いや、ナイス判断です。助かりました」

 アースが答えている間もゲイッシュは熱を計ったり、脈を調べたりしている。

「つうか、ここは?」

 かなり沖の方で海に落ちたのに、何故助けてもらえたのか謎だ。

「ファンの最北にある入り江だ」

 更にもう1人現れた男はゲイッシュに似た顔。
 ただし、こっちの男は丸坊主だ。

「これは俺の親父。一緒に漁師やってる」

「ダリルだ。城に海が凍ってるって報告に行ったのは俺」

 ダリル達は主に北の海で漁をしている。
 ここ最近、海の様子がおかしいと思って沖の方へ行ってみたら海の表面に薄く氷が張っていた。
 今まで漁師をやっていてこんな事は初めてだし、ファンに戻って年寄り達に聞いても経験がないという答えだったので異常事態かも、と城に報告に行ったのだ。


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