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トシシタノオトコノコ
【OL/お姉さん 官能小説】

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チャリンコに乗ったオウジサマ-2

「あ…こんなに震えて…もう大丈夫ですよ」

彼に言われて自分が震えていることに初めて気づいた。下手したらあのまま公園に引き連りこまれていたかもしれないと思うとさらに震えがとまらなくなる。彼は私の手をそっと握ってくれた。そしたら今度は涙が勝手に溢れ出す。

「ご…ごめんね…こわ…くって…」

怖かったのもあるし、きっと助けてくれたのが彼でホッとしたのもあるんだろう。涙が止まらない私と一緒にしゃがみこむと彼は私の背中を優しく撫でてくれた。

「もう大丈夫ですよ」

そう呪文のように繰り返しながら優しく、優しく。彼の優しさがさらに私の涙腺を緩ませる。どのくらいそうしてくれていたのだろう。ようやく涙も震えも治まってきた。

「お住まいはこの近くですか?もしよかったら送っていきますよ」

そこまで付き合わせるのは悪いと思いながらももしあの勘違いナル男が戻ってきたらと思うと大人しく彼の好意に甘えることにした。

「情けないことに自転車ですけど、後ろ乗ってください。ちょっと寒いかもしれないですけど」

場所を説明して、荷台に腰掛ける。自転車の二人乗りなんて十数年ぶり?

「しっかり捕まっててくださいね」

そう言われて遠慮がちに彼の背中を掴むと、手を腰に回すように言われ大人しく指示に従う。華奢だけど、頼もしい背中に頬をつける。なんだか高校生くらいに戻ったみたいにドキドキする。家までの道のりはほんの数分で、交わした会話は道順の説明くらい。

「あ、ココがウチなの。もしよかったらお茶でも」

ウチの前で自転車から降りる。

「でもこんな時間ですし、他のご家族に迷惑じゃ…」

「私、ココに一人で住んでるからそれは大丈夫」

ちょっと困惑したような表情の彼。次の瞬間お腹が鳴る音がして、慌てて真っ赤な顔でお腹を抑える彼を見たときにようやく微笑むことができた。

「お礼にご飯食べていって。って簡単なものしかできないけど」

「…お言葉に甘えてもいいですか?」

「もちろん。上がって。真っ暗で寒いけど。」

自転車を門の中に停めてもらって、家の中へ招いてリビングのソファに腰掛けてもらう。

「今作るからちょっと待っててね。陽人くん好き嫌いある?」

太陽の陽に人と書いて、ハルトと読む、と教えてくれた彼の名前。彼の雰囲気にぴったりの名前だと言うと、彼は恥ずかしそうにはにかんだ。カワイイ。対面式のキッチンにしてよかったな、とこの家で暮らし始めて初めて思った。誰かのために食事を作るなんて何年ぶりだろう。手早くできる塩昆布とキャベツのパスタを会話しながら作った。

「すごい美味しいです」

「よかった。それだけ美味しそうに食べてもらえると作り甲斐があるわ」

ここで誰かと食事するのってこんなに楽しかったんだっけ。陽人くんは本当に美味しそうに食べてくれて、少し打ち解けたせいか会話も弾んでくる。彼の本職は大学生、だとか出身地とか少しずつお互いのことを知っていく。話していてわかる。彼は本当にイイコだ。

「陽人くん、モテるでしょー?」

「そっ、そんなことないですよ。もう2年くらいカノジョもいないですし」

顔を真っ赤にして否定する。カワイイなぁ。

「え?そうなの?もったいないなぁ」

思わず本音がポロリ。周りの子、観る目ないなぁ。学部的に男子の割合が多くサークルとかにも所属してなくて女の子と出会いがないって笑う。

「バイト中にナンパとかされない?」

「ないっすよー。あ、前におばあちゃんに突然ウチの孫の婿にならないかって言われたくらいですかね」

「あ、そのおばあちゃんの気持ちわかるっ。私にも娘がいたら言いそうだもん。キミみたいなイイコが息子になってくれたらなぁって」

「息子ってそんなに年齢変わらないじゃないですか」

「いやいやいやいや。陽人くん20歳でしょ?こないだ成人式だったんだよね?ってことはひつじ年でしょ?私もひつじ年だもん」

「へ?え??32ってことですよね?いやいやいやいや見えないっすよ」

「もしかしてドン引きしてる?」

「し、してないですよ。25、6くらいかなぁって思ってました」

「うまいねぇ、陽人くん。やっぱり思った通りのイイコだ。お姉さん、キミみたいなコ好きよ?」

また陽人くんの頬が真っ赤になる。

「ふ、冬子さんは彼氏いらっしゃるんですか?」

「ううん、いないよ。私バツイチなの。あ、この前タオル貸してくれたでしょ?あの時ね元夫のお葬式だったの」

「え…そうだったんですか…」

「もう離婚して6年かな?ずっと許せなくてさ。たった1回の過ちを許してあげられないまま逝かれちゃった…そうだ。あの時もキミに助けてもらったの」

「お、オレ何も…」

「ううん、どうやって帰ってきたのかよくわかんないくらい落ち込んでてね。あのコンビニでキミの笑顔見たら少し回復したの。で、わざわざ追いかけてきてタオル貸してくれたでしょ?びっくりしたけどすごくキミの優しさが嬉しかったのよ。普段から仕事で疲れて帰ってきてあのコンビニ寄った時にキミがいると、すごく癒される。今日も助けに来てくれたのがキミだってわかって本当に嬉しかった。ありがとう」

「助けただなんてそんな…」

「いや、キミがあのまま気づいてくれなかったら、私公園の中に引き連りこまれてたよ、たぶん」

思い出したらまた急に震えが止まらなくなる。思っていた以上にダメージが大きかったみたい。ふわっと手を包まれた。陽人くんの華奢だけど大きな手。

「すごく怖かったんですよね。もう大丈夫ですよ」

「あ…ありがと…」

またこぼれてきた涙を優しく指でぬぐってくれる。

「冬子さん…オレじゃダメですか?」

真っ直ぐに私の目をみつめて、陽人くんがそう言った。


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