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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・クルルファータ-36

「もちろんだ」
「しかし、魔具技師とは……一体何を作らせたのか、手掛かりは残ってないだろうか?」
「設計図が残っている。しかし、見ても何が何やらさっぱり分からないぞ」
「そこは俺に任せてもらえないだろうか。こう見えて子供の頃はそういう専門分野もかじった事があるから、だいたいは分かる」
 ティトーの一声により、設計図が運ばれてきた。
「これは……」
 呟いたティトーは黙り込み、設計図を睨みつける。
「……不快だな」
「何が書かれていますか?」
 デュガリアの声に、ティトーは首を振った。
「ダェル・ナタルの人間をどうにかするのに飽きたのか?一つはリオ・ゼネルヴァの人間がダェル・ナタルに連れ込まれても体を消耗しなくなる首輪……ただし、効果はもって二週間程度だな」
「後は?」
 ジュリアスの声に、ティトーはますます渋面になる。
「精神の汚染・凌辱。特定の手順を踏む事により、相手の記憶を強制的に探り出す……無意識下に潜ませたい、屈辱的な記憶さえ遠慮なく引きずり出すような代物だ」
 それを聞いたボスは、吐くような仕草をした。
「つまりうちの職人をぶっ殺したのは、誰にも秘密でリオ・ゼネルヴァからひっさらってきた人間をいたぶりたいからって事か?」
 二つの世界の人間が恋に落ちるという事は今だかつてない事態のためにボスはそっちの結論に飛びついたわけだが、それが正解である事を六人は承知していた。
「なんてこった……常軌を逸してる」
「あいつに常識は通じないわよ」
 最後の一杯を飲み干し、ウィンダリュードは言う。
「身内のあたしらが見てもガイキチ一歩手前だもの。だから、こいつが後悔させてやるって言ってるの」
 少女の言葉に、ボスは唸った。
「なんだか、この件からは手を引いた方が賢明な気がしてきた」
「それがいい。あいつをどういう目に遭わせたか詳細が知りたければ、後日報告書を送らせてもらう」
「それで満足すべきか」


 話の詰めと食事が終わる頃にはすっかり日が沈んでいたため、ボスは部屋を用意してくれた。
 案内役に従って六人でぞろぞろと各自の部屋に向かって歩いていると、ヴェルヒドが深花に声をかける。
「助かったぞ」
「え?」
 目を見開いて驚くと、ヴェルヒドが笑う。
「お前の無警戒な振る舞いで、ボスはだいぶ毒気を削がれた。おかげでこちらにきわめて有利な話し合いができたんだ」
 専門的な話はさっぱり分からないので口は食事に集中させていたのが、かえっていい結果を招いたらしい。
 食事の途中にティトーが笑っていたのは、毒気を抜かれるボスの様子を面白がっていたからのようだ。
「はぁ……」
 曖昧な返事をすると、ヴェルヒドが噴き出した。
「全く、お前はアンバランスだな。危なっかしくて見てられん」
「だから俺が保護してんだよ」
 後ろからジュリアスが手を伸ばし、深花の肩に手を置く。
「これでもずいぶん進歩してんだがな」
「……しかし、甘ちゃんである事に変わりはなかろう?」
 ヴェルヒドの言葉は、条件さえ整えばいつでも敵同士に戻れる事を示していた。
「まあそうだな」
 あっさりと、ジュリアスは認める。
「だが、こいつ自身は甘ちゃんのままでいい。俺がこいつに手を汚させる気はないし、既にそれらしい振る舞いを身につけてるんでな」
「あんた、甘やかされてるのねえ」
 ウィンダリュードが、呆れた風に呟く。
「殺人なんて、体験しない方がいいに決まってますよ」
 デュガリアの言葉に、ウィンダリュードは肩をそびやかす。
「我々のような職業の人間がそんな事を言うのはおこがましいですがね」



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