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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・クルルファータ-30

 その日の昼頃、一行はティトーと合流した。
「よう、久しぶり」
 三人に向けて挨拶したティトーは、はぐれる前と変わらないように見えた。
「これで全員揃ったと」
 ジュリアスが、手の平に拳を打ち付ける。
「フラウ救出に取り掛かる前に聞かせてもらおうか。一体どうして、あんたらが協力してくれるんだ?」
 失態のせいで聞くのを後回しにしていた疑問を、ようやく問う。
「バランフォルシュ様から要請があったからよ。決まってるじゃない」
 さも当然と言わんばかりに目を見開いて、ウィンダリュードが答える。
「俺は少し違う」
 ヴェルヒドは、肩をすくめた。
「バランフォルシュの請願を受け入れる理由は、俺にはない。ただ、あいつを……ミルフィエルド、ザグロヴを止めねばならない理由がある」
「その理由とは?」
 ティトーの質問に、ヴェルヒドが唸る。
「俺とウィンダリュードの倫理感は、割と近い。おそらくはお前達とも似通ったものだ……だが、あいつは違う」
「長年コンビを組んじゃいるけど、正直あいつのやり口には怖気を振るう事がままあるわ……人としてのモラルって奴が、欠けてるのよ」
 ウィンダリュードの台詞を聞き、ヴェルヒドは肩をすくめて同意を示す。
「お前達には悪いが、さらわれたサフォニーは生かさず殺さず……よりも悪い状態に置かれているだろう。サフォニーに執着しているのは気づいていたが、まさかここまでするとは思わなかったというのが我々の本音だ」
 生かさず殺さずと聞かされ、ジュリアスは体を緊張させた。
「だからこそ、俺はお前達を助けるつもりだ」
 ヴェルヒドが、ジュリアスを一瞥する。
「このような形で優位に立つのは、不名誉でしかない。正々堂々と渡り合って打ち破り、我々こそが正当種だと証明してみせるさ」
「互いの名誉に懸けて、だな」
 納得したように呟いたティトーは、ジュリアス・深花・デュガリアと順繰りに顔を見遣る。
「あんたらは俺達がどのような方法でダェル・ナタルへ潜入しているのか、バランフォルシュから聞いているのか?」
 その質問に、ヴェルヒドは首を横に振る。
「そうか。実の所、俺も知らないんだ」
 ティトーの言葉に、ウィンダリュードがずっこける。
「しかし、聞いた話からしてバランフォルシュにかなりの負担を強いているらしい。離れ離れになって余計な日数を食ってしまったから、互いの行動理由に納得がいったなら早く行動すべきだと思うんだ」
 歩き始めたティトーを、三人が追い掛ける。
「あっちに街があった。まずは情報収集といこうじゃないか」
「……って、おい!」
 ヴェルヒドの声に、ティトーは足を止めた。
「まだ疑問があるのか?」
「お前達……理屈の分からない術を鵜呑みにしてこっちへ潜入してるのか!?」
 ティトーは、肩をそびやかす。
「その通りだ。何か問題でも?」
「お……大有りでしょ!」
 動揺して、ウィンダリュードは叫ぶ。
「どこまで無謀なのよあんたら!?」
「別に、バランフォルシュを信じてるわけじゃねえよ」
 ジュリアスが答える。
「俺達が信じてるのは、深花だ」
「その通り」
 ティトーが肩をすくめる。
「深花は嘘をつかない。深花を通じて知るバランフォルシュも、嘘をつかない。バランフォルシュが教えてきたやり方を深花が信じているから、俺達は躊躇わずにこっちへ来ただけさ」
 バランフォルシュではなく、自分を信じている。
 自分が思っている以上の信頼を思わぬ所で示された深花は、真っ赤になった。
 気恥ずかしくて、どうすればいいのか全く見当がつかない。


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