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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・クルルファータ-29

「どうした?」
 蚊帳の外で押し黙っていたジュリアスが、声をかける。
「当たりかも知れません。この先に、洞窟がありますか?」
 デュガリアの指し示す方角は……昨日、二人で一晩明かした洞窟がある。
「もしかして、あそこか?」
 ジュリアスは、胸元から宝石を掴み出した。
「おい、あんたら。ここで思考を繋いでも、ばれやしねえよな?」
「は?」
「思考を繋ぐ?」
 ヴェルヒドとウィンダリュードが、同時に戸惑った声を上げる。
「……あ?」
 イエスかノーかの返事を求めていたジュリアスは、二人が戸惑うのを見て眉をしかめた。
「……まさか、知らないのか?」
「何を?」
 苛立つウィンダリュードを、ヴェルヒドが抑える。
「お二人とも、宝石を所持していますよね?」
 まずはそこからと、深花が問う。
「こっちの四精霊は自分の神機に乗る四人に、宝石を貸与します。これを握ったり触れ合わせる事により、互いの思考を繋げて意思の疎通を謀る事ができるんです」
 説明を聞いたヴェルヒドが、首を振る。
「いや……こちらには、そのような物はない」
「ない?」
 驚いた深花は、ジュリアスと顔を見合わせた。
「じゃあ、とりあえず現在地がばれる心配はねえな」
 食い違う認識を擦り合わせるより、ティトーと合流する方が先だ。
 そう考えて、ジュリアスは宝石を握る。
 相棒の慣れ親しんだ意識と思考が、彼の中に流れ込んできた。
『ジュリアスか?』
『もちろんそうだ。お前、こんな洞窟にいるだろ?』
 言葉とイメージを送ると、ティトーの驚きが返ってきた。
『実は昨日、俺と深花で一晩過ごした場所なんだ』
『……なるほど。意外と近くにいるんだな』
『いや、そうでもない。ただ、デュガリアを拾って協力者とも合流できた。後はお前だけだ』
『俺だけ仲間外れかよ』
『そう言うな。今からそこへ行くから、なるべく動くなよ』
 思考の繋がりを切ると、四人がじっと様子を窺っていた。
 エネルギーの充填も終わったのか、神機も引っ込んでいる。
「確かにティトーだ。洞窟の場所も分かるし、急いで行こう」
「……急げるんですか?」
 深花がヴェルヒドに問うと、彼は首を振った。
「難しいな。レグヅィオルシュが二体並んで歩いているのを目撃されたら、俺はお前達を殺さねばならなくなる」
 昨夜のように夜闇に紛れて移動できるわけでもなく、乗り物でも購入するためにまたしても農村に行くのは危険が多すぎる。
 かといって片方しか神機を召喚しないのは、互いの信頼度からするに安心できる行為ではない。
「じゃあ歩くしかないな」
 結論を出すと、ジュリアスは歩き始めた。
「何か買うにしても、あそこだけが農村じゃないだろ?」
「それもそうか」
 肩をすくめ、ヴェルヒドは後に続く。
「ティトー殿にも歩いていただけるよう要請してはいかがですか?」
「その方がいいな」
 デュガリアの声に、ジュリアスが同意した。
「下手すりゃ一日以上歩き通しじゃない。面倒くさぁ」
 ぼやいたウィンダリュードは、歩き始めながら深花を見た。
「……貸し借りはなしよ」
 ウィンダリュードの横に並びながら、深花は首をかしげる。
「あたしらはエネルギーの変換供給を教えた。あんたらはあたしらにはない異常な連携の秘密を教えた。だから、貸し借りはなし」
「ええ」
 ウィンダリュードがそう主張するならそれでフェアなのだろうと思い、深花は頷いた。
「さて、それじゃ迷子と合流しましょうか!」
 ウィンダリュードの発破に、一行は苦笑するのだった。



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