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非線型蒲公英
【コメディ その他小説】

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非線型蒲公英 =Sommer Marchen=-84


「お…おい、フェグ…ライン!! よ、よせ!!」
 訳の解らぬ内に、とんでもない事になっている状況に気がついた聡は、言うよりも先に、槍を構えているフェグラインの左腕を掴んだ。
「了解《Einversta:ndnis》。ですが、命令の意図が不明です」
 疑問を返すフェグライン。その間――何事も無かったかの様に、いつの間にか黒槍は降ろされていた。
「んなモノ、向けたら危ないだろ!? 姉さんに教わらなかったのか…って、教えるわけないよな…あの人が」
「危険性は理解しています。フェグラインは、その危険性が在る事を踏まえて行動したのですが」
「何というイレギュラー思考!! 人を人とは思わないその発言!! 万壊に値しますねッ!!」
「…ヘクセンさんが偉そうに言う事じゃないですよ」
 槍が降ろされてもなお、少々冷や汗を掻いていた妃依だったが、口先だけはいつもの調子だった。
「ともかく、危ない真似は止してくれ」
「それは、戦闘、攻撃行為の禁止命令ですか」
「ああ」
「拒否《ablehnen》」
 顔色も変えずにきっぱりと拒絶する。
「…は?」
「フェグラインの存在理由の根幹を書き換える事は、例えマスター・サトシであっても許可されません」
「いや…でもな」
 全く、どうして姉さんは、いつもいつもいつもいつもい(中略)俺を困らせる様な嫌がらせをしてくるかな…しかも間接的に…と、聡は、ここには居ない迷惑な姉の事を思いながら、目前の問題を如何とするかを考えた。
「代案として、この場における戦闘行為を回避する事は可能ですが」
 が、答えは不意に、問題そのモノの方から提示された。
「あ…なら、そうしてくれ」
 特に深く考えず返す。
「了解。Polarlichit錐状展開、SEACA出力50%起動」
 フェグラインが淡々と吐いた、その言葉の意味を問い返す間も無く、
「『レーゲ・フリューゲル』、実行《Ausfu:ren》」
 フェグラインと、彼女に抱きかかえられた聡は、一陣の風だけを残し、一瞬にしてその場から姿を消していた。
 …予想もしなかった事態に、唖然とする妃依達を残して。


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