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非線型蒲公英
【コメディ その他小説】

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非線型蒲公英 =Sommer Marchen=-69


 それをツッ込んだ所で、マトモな答えが返って来るとも思えなかったので、美咲は心の中だけに留めておいた。
「アリスちゃんって、けーわい…とか付いてるって事は…ヒントのお姉さんと同じで琴葉姉さんが造ったの?」
「そうよ」
「じゃあ、ぎゅ、ってしてもいい?」
 何故そうなるのだ…と、美咲は思ったが、やはり口には出さずにおいた。
「ええ、構わないわ」
「いいの? じゃあ、アリスちゃん、こっち来て〜」
「え…? えっと…は、はい…」
「とうっ」
 悠樹は射程範囲内に歩み寄ってきたアブリスに向けて唐突に飛び掛り、そのまま抱きしめた。
「わっ、わわ…」
「あはは、ちっちゃくてカワイイねぇ、ひよちゃん位かなぁ?」
 頬擦りしながら頭の上に手をやり、言う。
「そうね、ほぼ同じ位よ」
 この場に妃依が居ないので、琴葉は本人の前では偽っていた真実をぶちまけた。
「そうなんだぁ…んむ…」
 ――と、悠樹は何を考えたのか、唐突に、
「…ふぁ…ぅ…っ」
 アブリスの唇を奪っていた。
「ゆ、悠樹先輩…?」
「気を付けろ、湖賀…酔っている時の奴は、基本的に見境が無い」
 酔った悠樹に絡まれた経験が一度や二度では無かった美咲は、悠樹の奇行に驚いている燐に警告した。
「み、見境が無い…ですか…?」
「ああ…少しでも隙を見せたら襲われるからな、警戒は怠るな…」
 酔った悠樹に襲われて危うい所までイッた経験が、やはり一度や二度では無かった美咲は、辛酸を舐めた様な表情で補足した。
「わ…解りました」
 今、正に目の前でアブリスがモロに襲われている(諸事情により詳細描写不可)ので、説得力は抜群だった。
「…や、っ…はぁ…っ…やめ…くだ、さ…っ…ぃ」
「あははっ、アリスちゃん、カワイイ〜♪」
「フフ…」
 この場で楽しそうにしているのは、襲っている酔っ払いと、その従姉のみで、襲われているアブリス以外の三名(アンファング含む)は、その様子を固唾を呑んで見守っているしかなかった。


 同時刻、遊佐間家浴室。
「どうして私がこんな事をしないといけないんですかッ!? マスター!!」
 一子纏わぬ姿のヘクセンの叫び声が浴室中に反響した。
「…私は…その…恥ずかしい、ですし…」
 浴槽の中、お湯に肩まで浸かっている妃依が、天井を見上げた格好のままで答えた。
「だからって!! 私がやらなきゃいけない理由にはなりませんよ!!」
「…それに、ヘクセンさんって、メイドさんですし」
「それはそうですが!! どちらかと言うとメイドよりは、私自身という個性に重きを置きたい訳ですよ!! 私としては!!」
「…問題発言ですね」
「ともかく!! 今、重要なのは、どうして私が弟様を洗っているのか!! と言う事ですよ!! マスター!!」
 ヘクセンの言う通り、浴室のタイルの上に横たえられた聡は、ヘクセンによってぞんざいにシャワーを浴びせ掛けられていた。もっとも、意識を失っているので服は着せたままだったが。
「…それは…私が『先輩を洗ってあげてください』と、お願いしたからだと思いますけど」
「マスターの場合!! それはお願いじゃなくて、命令になるんですよッ!! 絶対服従ですよ!? 逆らう事など出来ないんですよ!? ああっ!! 早く効果を失って!! 絶対服従の命令よ!!」
「…お風呂で叫ばないで下さい…耳がおかしくなります…」
 妃依は耳を押さえながら、眉を顰めて言った。
「グッ…!! また…命令をォォ…ァァぅァゥ…!!」
 酸素の足りていない魚の様に口を開閉させ、ヘクセンは怨嗟の呻き声を上げた。
「…手が休んでますよ、ヘクセンさん」
 浴槽の縁に顎を乗せてヘクセンを見やり、吐息混じりに言う。


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