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非線型蒲公英
【コメディ その他小説】

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非線型蒲公英 =Sommer Marchen=-68

 美咲が覗き行為を終了して間も無く、
「はぁっ…!! ひぃっ…!! ば、バイタルチェック…!! ん、んん…ッ!? パルス安定!? おわぁっ!! ま、マスター!! マスターッ!!」
「…ど、どう、したん…ですか…いたっ…痛いです」
 興奮した面持ちで肩をバシバシと叩いてきたヘクセンに、何事かと妃依は聞き返した。
「い、生き返りましたよ!? 弟様がッ!!」
「…えっ…ほ、ほんと…ですか…っ」
「ええ!! マジです!! どうなる事かと思ってましたが…!! ギリギリ大丈夫だったみたいですね!! 流石は弟様!!」
「…よ…かった…」
 安堵と疲労から深く息を吐くと、妃依は聡の胸へと崩れ落ちた。
「…ぅっ…」
 表情の失せていた聡の顔に苦悶の色が浮かんだ。
「…あっ…せ、先輩…気がついたん――」
「…ぐ…ゲボッ!! …ゴバァッ!!」
 びしゃ、びちゃ――


 ――しばらくお待ちください――


「…うぅ…っ…」
「うぁ…!! ま、マスター…!! 大丈夫ですか!? ご尊顔がゲロにまみれて良い具合に…!!」
 聡の顔を覗き込む形となっていた妃依は、気管に詰まっていた吐瀉物をモロに浴びせられていた。
 ソレを浴びせかけた本人はと言うと、呼吸は安定しているが、意識は未だに戻ってはいないようだった。
「…ふ…フフ…あはは…」
 汚物にまみれた顔を両手で拭いながら、妃依は昏い笑い声を上げた。
「どっ!! どうしたんですか!? マスター!! …こ、怖いですよッ!?」
「…ええ…先輩が目を覚ましたら、どうしてやろう…って考えたら…凄く面白くて」
 スッ、と無表情になって、そう答える妃依。
 ああ、弟様は終わったな――ヘクセンの未来予測演算は、漠然とそう弾き出していた。
「…ヘクセンさん…もう、先輩は大丈夫なんですよね」
 暫くの間を置き、妃依は普段通りのトーンで言った。
「え…!? ええ!! まあ、マスターが絞め殺したりしない限りは大丈夫だと思いますが!?」
 妃依は、そんなヘクセンの軽口を流し、
「…じゃあ…お風呂」
「はい!?」
「…入りませんか…一緒に」
 お互いの『状態』を何とかする為に、そう提案した。


 五分後、遊佐間家リビング。
「やっほー、琴葉姉さん、泊まりに来ちゃったよぉ」
 片手にビニール袋いっぱいの缶チューハイ(ちなみに自宅からの持参物であり、冴子の私物)を携えていた悠樹は、居間に入るや否や、空いている方の手を大きく振りながら言った。
「あら…悠樹、よく来たわね」
「どうも、今晩はです…悠樹先輩」
 最近、琴葉のおかげで、以前にも増して悠樹と仲が良くなっていた燐は、突然の訪問にも慣れた様子で挨拶した。
「リンリン、こんばんわっ!! …あれぇ? その子は?」
「あっ…わたしは、KY-02R アブリスっていいます!! は、初めまして…えっと…」
「よろしくねぇ、私は杵島悠樹って言うんだけど、好きにように呼んでイイよぉ。その代わり、アリスちゃんって呼ばせてもらうね」
「は、はい…宜しくお願いします、悠樹様」
「杵島…何故、アリスなのだ?」
「ん〜…だって、『アブリスちゃん』って、言い辛いんだもん。それに、アリスちゃんの方がカワイイし」
「確かに、その方が効率的な名前ね」
(何が効率的だと言うのだろうか…)


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