それぞれの行き着く場所-1
閉店30分前―――。
ウィークデーの中日(なかび)ということもあって、今日はいつもより客の引きが早い。
あいりは商品整理の手を止め、マネキンの着せつけ変更をしている派遣社員の山本の背後にそっと近づいた。
「すみません……私ちょっと資材の確認に行ってきますんで……もし何かあれば内線で呼んで下さい」
出来るだけ周りに聞かれないように小声で告げ、足早にバックヤードへと向かう。
後ろめたい気持ちがあるせいで、山本の顔をまともに見ることが出来なかった。
微かに震える指先で口元を覆いながら薄暗い非常階段を小走りに駆け降りる。
こんな嘘を平気でついてしまえる自分が、ひどく汚ならしく感じられた。
資材庫は地下階のバックヤードの一番奥にあり、営業時間中はあまり人の出入りがない。
『早く――済ませなきゃ――』
やたらと気持ちが急いて、扉の前にたどり着いた時には異様に息が荒くなっていた。
あたりを見回し、誰もいないことを確認してから中へと身体を滑り込ませる。
窓一つない8畳ほどの真っ暗な倉庫―――。
壁に沿ってぐるりと置かれたスチール棚には、Tデパートの包装紙や紙袋が大量に積み上げられている。
蛍光灯の豆球だけを点け、扉の内側からカチリと鍵を回した。
「……はぁっ……」
ここならば大丈夫だ―――。
ホッとした途端、こらえていた劣情が一気にこみ上げてきた。
「……はっ……はぁっ……」
切ない吐息を漏らしながら、スチール棚にすがりつくようにがくんと膝をつく。
カラダが燃えるように熱い―――。
淫らな欲望で、頭がいっぱいになっていた。
両の乳首と股間が、熱を帯びてジンジンと疼いている。
日常的な激しい凌辱に慣れてしまっていた肉体は、川瀬が死んでからというもの、性欲の捌け口を失って爆発寸前になっていた。
この資材庫は普段人気(ひとけ)がない上に内鍵がかけられる。
もしどうしようもなくなった時は、ここを使おうと密かに心に決めていたのだ。
「あっ……はぁっ……も……ダメ……」
いけないことだと思いながらも、両手は自らの乳房をまさぐり始める。
ブラウスの上から柔らかな肉を荒々しく揉みしだくと、切ないような痛みと快感が身体中を駆け巡った。
右手をブラウスの下に差し入れ、わざと乱暴にブラをずらす。
弾かれたようにぴんと飛び出した乳首に触れると、そこは既に興奮で硬く立ち上がってしまっていた。
「あぁっ……ハァッ……ハァッ……」
敏感になっているそこを指でつまみながら先端を爪先で引っ掻くと、一気に下半身が潤んでいく。
「あっ……いぃっ……いゃっ………あぁん……」
はしたない自分自身の肉体に羞恥を感じながらも、淫らな行為を止めることが出来ない。
もう一方の手でスカートを捲り上げ、パンストの上から熱くなった股間に指を這わせる。
「うっ……あぁっ……」
緩い刺激がもどかしくて、無意識のうちに腰が前後に動いてしまう。
たまらず乳房を揉んでいた手を離し、下着とパンストを膝まで引きずり下ろした。
陰部が剥き出しになる感覚に罪悪感が高まる。