それぞれの行き着く場所-3
無防備に露出した下半身を隠すことも出来ないまま、あいりはその場にへたりこんだ。
「どうした?……続けろよ」
豆球だけに照らされた薄暗がりの中、ニヤニヤしながら立っていたのは、坂田であった。
「さ……坂田…主任……」
「……さっき非常階段で見かけてさ……なんか様子が変だったから後をつけてきてみたんだけど……こういうことだったのかよ」
「……か…鍵……は……?」
「ククッ……資材庫の合鍵は前から持ってんだよ―――ここは何かと『便利』な場所だからなぁ……そうだろ?」
意味深な笑みを浮かべながら、坂田が後ろ手に扉を閉め、内鍵を回す音が聞こえた。
「……やっぱあいつに飼われてただけあって、お前相当の淫乱なんだな」
「……やめて……」
薄明かりに照らされた吹き出物だらけの顔に、卑猥なオスのオーラが漂っている。
「こ……来ないで……」
「そんな格好で言われてもなぁ―――」
坂田はすっかり興奮した表情を浮かべながらあいりにジリジリと近づいてきた。
「……説得力、ねぇんだけど?」
「いやっ!やめてぇっ!」
あっという間に両手を捕まれ、着衣の乱れた身体を乱暴に床に押し倒される。
抵抗しようともがく足の間に深く膝を入れられ、上から体重をかけられると、完全に身動きがとれなくなってしまった。
「……やぁ…っ……」
敵に正面から身体を開く格好になってしまい、せめてもの抵抗に必死で顔を背けた。
「へへっ……あいりちゃんには悪いけど、俺――あいつが死んでせいせいしてんだよね」
坂田は興奮した口調で言いながら、あいりの身体に舐め回すような視線を這わせる。
「ハァ………正直ウザかったんだよ……今まで坂田会は全部あいつの言いなりだったし………でも……ハァ…ハァ……これからは全部……俺のやりたいようにやるからな!ハハハッ!」
坂田は、ひどく狂気じみた声でけたたましく笑いながら、あいりの耳たぶに貪りついてきた。
うるさいくらいの鼻息と、ぬるぬるした舌が、敏感な耳穴の奥にまで侵入してくる。
まるで性器そのものに舌を入れられているような嫌悪感に、思わず大きな悲鳴をあげた。
「……やっ……いやぁっ!……」
「そんなに嫌がられるとますます興奮すんだよな……ハァ…ハァ…もうあの男にとやかく言われずにこの身体を自由に出来ると思うと、すげぇ興奮するぜ!」
「坂田会」という名前のせいでこれまで矢面に立たされ、損な役回りをさせられてきた坂田にとって、あいりを自由にいたぶることは、ある意味川瀬に対する復讐なのかもしれなかった。
「支配人も未だにあいりちゃんを愛人にしたがってるらしいけど、今までは川瀬が邪魔してたからな……これからは覚悟しておいたほうがいいぜ……」
「……そ…そんな……」
新入社員歓迎会以来、しばらくの間しつこかった中森からの誘いが、ある時期を境にぱったりとなくなったのは、自分に飽きてあきらめてくれたのだろうと思っていたのだが、そうではなかったらしい。
中森だけではなく、辰巳や上野も、最近あいりを見かけるたびに馴れ馴れしく接してくることが確実に増えていた。