【ロケットパンチを君の胸に♪】〔第二部・陰謀編〕-3
その頃…女性型戦闘ロボット【ヴルキューレ・α】に記憶を移植された…鈴美の姉、涼華は…富士の樹海に立っていた。
(んっ…やっぱり、お日さまの光って気持ちいい♪)
格納倉庫から、外に出された、涼華は…ロボットでありながら両腕を頭の上にあげて、気持ち良さそうに背伸びをした。
ずっと、カタパルトで体を固定されていた、涼華は人間が体をほぐすみたいに…オイッチ!ニイィ!と、軽く柔軟体操をした。
『気分は、どうかな?』
足元に広がる樹海の中から、スピーカーを通して暗闇長官の声が響く。
格納庫の開いた上部ハッチから、エレベーター式の昇降台に乗って、外に出された時に初めて…涼華は、戦慄地球防衛軍の本部が富士山の、地下に広がっていコトに気づいた。
「最高♪正義の組織の本部って、富士山の地下にあったんですね…知らなかったなァ」
『一応…セオリーを守って建造されたからな…それじゃあ、はじめるか』
「えっ!?はじめる…って…??」
なにを…と、涼華が聞き返す前に、涼華の左ナナメ前方の地下ハッチが開いて…地面の下から、黒い巨体のロボットが出現した。
涼華の半分くらいの、大きさの【ヨルムンガルド・β】だ。そして、今度は右ナナメ前方から、犬型の巨大ロボット【フォンリル・γ】が出現する。
女性型巨大ロボット【ヴルキューレ・α】〔涼華〕
人型戦闘ロボット【ヨルムンガルド・β】
犬型戦闘ロボット【フォンリル・γ】
α〔アルファ〕β〔ベータ〕γ〔ガンマ〕の、三体のロボットが正三角形を作る位置に並んだ。
「???」
何がはじまるんだろう…と、涼華は首を傾げる。フォンリルが嬉しそうに尻尾を振りながら…涼華の方に駆けてきた。
(フォンリル…)
元々、犬好きの涼華は人間の時のクセで、微笑みながら…屈んで両手を広げた。
ワンッワンッ!!ガシャン…ウィィィン
走ってくるフォンリルの、四肢が胴体に収納された…涼華の顔色が変わる。
(ひっ!!)本能的に危険を感じた涼華が、駆けてきたフォンリルを、寸前のところで…横に避けて逃げた。
ズザザッ…ドッドッドッ!!
合体する相手から逃げられた、フォンリルの巨体が樹海の木々を、なぎ倒す。
「だめですよ…逃げちゃあ…せっかく、フォンリルが涼華さんと合体しようとしていたのに…」
ヨルムンガルドが、合体を拒否している、涼華の気持ちも知らずに言った。
『ちっ!失敗したか…』
舌打ちした暗闇長官の、残念そうな呟き声が聞こえてくる。
「な、なにを…あたしに…」
座り込んだ涼華は、拳を握り締め…ワナワナと、機械の体を震わせながら…。
「させる、つもりだったんですか!!」
どこかに隠れている暗闇長官に、対して怒鳴る。
『途中まで、いい合体ムードだったから…その調子で合体してくれると、思ったのだが…』
「するわけないでしょうが!あたしは、機械の体に記憶を移植されていても、人間です!!もう、イヤァ!」
その場から逃げ出すように、ドスッドスッ…と大地を揺らして駆け出した涼華は、目に見えない壁に激突した。
バキィィィン!
まるで、ガラスがあるのを知らずに、走ってきて顔からぶつかったような…痛烈な激突音が樹海に響き渡る。
「つぅ…」
思わず涼華は、ロボットだから痛みを感じるはずは無いのだが…人間だった時の反応で…鼻先を両手で押さえて、しゃがみ込んだ。
『あ、そうそう…言い忘れていたが、基地の周囲は、電磁シールドが張ってあるから気をつけるように…』
鼻を押さえた涼華は。「鬼、悪魔…」と、暗闇長官に対して呟いた。
合体失敗の様子を、地下の巨大モニター画面で見ていた、暗闇長官こと…戦慄地球防衛軍【紅い幻魔団】の科学者で最高責任者の、暗闇 五郎は肩をすくめる。