投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

【ロケットパンチを君の胸に♪】
【コメディ その他小説】

【ロケットパンチを君の胸に♪】の最初へ 【ロケットパンチを君の胸に♪】 8 【ロケットパンチを君の胸に♪】 10 【ロケットパンチを君の胸に♪】の最後へ

【ロケットパンチを君の胸に♪】〔第二部・陰謀編〕-2

 少しづつ鈴美たちは列の、前方へと移動していく。
 鈴美たちのすぐ前に立つ、月ノ輪グマの怪人にペパーミント伯爵が、親しそうに声を掛けた。
「クマさんは、今日も日替わりのA定食ですか?」
「ええっ…妻が、今月は苦しいから…安いA定食でガマンしてくれって言うもんで…」
 振り返ったクマの怪人は、照れ臭そうに頭を掻いた。

「来月、二人目が産まれるもので…節約しないと…」
 ペパーミント伯爵は、クマ怪人の言葉に両目を細めた。

「それは、めでたい…今度は、白クマ怪人ですか?パンダの怪人ですか?」
「いやぁ…柳川教授の診察だと、どうやらマレークマの怪人になるらしいので…」
 柳川教授、と言うのは…鈴美を改造した、フェアリー☆テールの改造人間学の権威でありながら…下町の職人気質を持つ、天才科学者だ。

「わたしも、まだまだ頑張らないと…子供のためにも」
 と、月ノ輪クマの怪人は笑った。はたから見ると奇妙な光景だが…フェアリー☆テールの怪人たちに慣れた鈴美には、ほのぼのとした日常の光景だ。

 食券を買って、それぞれの昼食をトレイに乗せた三人は、テーブルについた。
「怪人さんにも、いろいろな事情があるんですね…」
 食べながら、鈴美が言った。
「そうだな…さっきのクマさんは、人間社会からのリストラ組でね…新たな人生を求めて、フェアリー☆テールに怪人志願してきたんだ」
「へえっ…あの怪人さん、会社勤めしていたんですか…」
「えへっ、実はあたしもアルバイトから、このフェアリー☆テールに入ったんですよぅ」
 三人が楽し気に会話を、していると…一人の冷たそうな表情の女性が、鈴美の近くに、ツカツカとやって来た。

 銀色の金属を甲冑のように、ゴテゴテとつけて…顔にイナズマのような、メイクをしているところを見ると…幹部クラスの人物らしい。
「そこ、あたしの席…トレイじゃま…どけて…」
 女性は鈴美の隣の席を、顎先で示した。
「あっ、すみません…」
 トレイをどけると、女性はガシッと、椅子に座り持参した、お弁当箱を取り出して食べはじめた。
(なんか怖い感じのする人…)
 鈴美は、そう感じた。ペパーミント伯爵が、女性を眺めて軽く微笑む。
「相変わらずだな、【チョコパフェ生徒会長】…自分の席を決めているなんて」
 チョコパフェ生徒会長…と、呼ばれた女性幹部は、ジロッとペパーミント伯爵を睨んだ。

「鈴美ちゃん、彼女はね…別組織からの、派遣幹部なんだ」
「えっ!?派遣幹部?」
 ペパーミント伯爵の説明が、はじまった。

「この世の中には、フェアリー☆テールの他にも、いろいろな悪の組織が存在するんだ…悪の組織同士で連絡を取り合って、作戦や戦うヒーローたちが、かち合わないようにしているんだ」

 鈴美は、なるほど…と、思った。確かにいろいろな悪の組織が似たような作戦を立てたり同じ場所に現れれば、共倒れになる可能性もある。

「怪人が爆弾を仕掛けた建物を、別の組織が操る怪獣が破壊したら…元も子もないだろう…そうならないために、組織同士のつながりがあるんだ…チョコパフェ生徒会長は、ロボット怪獣や怪人ロボットを操る組織の幹部でね…研修を兼ねて、このフェアリー☆テールに…」

「ちょっと!人が食べている時に、お喋りはやめてくれない!」
 手作りらしい、お弁当を食べ終わった。チョコパフェ生徒会長が憤慨した様子で席を立つ。

「お喋りな男は、嫌われるわよ…」
 チョコパフェ生徒会長は、鈴美を冷たいサド目で見下すように睨むと…「フンッ」と、言い残して去っていった。

「あららっ…怒らせちゃいましたね」
 クモ女が、口をモグモグさせながら言った。
「根は悪くないんだがな…少し愛想が無いのが、玉に傷だな…」
 と、食後のお茶をすすりながら、ペパーミント伯爵が苦笑する姿を鈴美は、眺めた。


【ロケットパンチを君の胸に♪】の最初へ 【ロケットパンチを君の胸に♪】 8 【ロケットパンチを君の胸に♪】 10 【ロケットパンチを君の胸に♪】の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前