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【ロケットパンチを君の胸に♪】
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【ロケットパンチを君の胸に♪】〔第一部・受難編〕-4

「よせやい、教授だなんてよ…」
 柳川教授は、角刈りの頭を照れたように掻いた。
「オレっちは下町の職人科学者だからよぅ…棟梁〔とうりょう〕でいいぜ…怪人になりたい時は、いつでも言ってくんな…ゴキブリでも、ナメクジでも、好みの遺伝子を組み込んで…変身させてやっからよ」

「はぁ…その時は、お願いします」
 鈴美は、さすがにゴキブリとかナメクジの怪人には、なりたくないなぁ…と、思った。

 その時、またドアが開いて…全身黒タイツで、覆面で顔を隠した。白衣姿の男が顔を覗かせた…フェアリー☆テールの戦闘要員だ。

「棟梁、改造手術の仕上げお願いします」
「おうっ、今いくぜ…まったく、最近の若い科学者は、メスがねぇとなんにもできぬぇ…オレっちなんか、これだけで手術しちまうのによぅ…それじゃあな」

 と、タンカをきって、ノミとカナヅチを持った、江戸っ子の科学者は部屋を飛び出していった。
「あのぅ…あたしも、あの人にノミとカナヅチで改造されたんですか?」
「すごいだろう…天才ならではの手腕だな」
 ペパーミント伯爵は、腕を組んで微笑んだ。

 その頃…姉、涼華の方はと言うと。

「誠に申し訳ありません…わたくしの不注意で、このようなことになってしまって…」
 涼華が格納されている場所に、あの黒い角の生えたロボットがやってきて頭を下げた。
 あの時は、大きく見えたけれど…今は、涼華の半分くらいの大きさに見える。
「わたくし、戦慄地球防衛軍のロボット部署に所属する、人工知能型戦闘ロボット【ヨルムンガルド・β〔ベータ〕】と言います」
 ロボットと会話するのは、妙な気分だったが…涼華は、思いきって聞いてみた。
「そう…よろしく、ねぇ…貴方も記憶を移植された人間なの?」
「いいえ、わたくしは…元々、学習タイプのロボットとして造られましたから…ヴルキューレさんとは違います」

 ヴルキューレと、言われて涼華は、少し気分が悪くなった。
「そ、そう…もう少し質問していい、貴方は結構、自由に施設の中を歩き回れるのね」

「はい、暗闇長官からお許しをいただいておりますので…ヴルキューレさんも早く、許可が下りて動けるようになるといいですね…その時には、施設の中を案内しますよ。他の部署には、戦隊ヒーローや単独ヒーローもいるんです」

 涼華には、ついていけそうにない、内容の会話だった。
「ありがとう…ねぇ、そのヴルキューレって呼び方、やめてくれない…涼華でいいわよ」
「そうですか…いいネーミングだと思うんですが、本人が嫌なら…涼華さんって呼びます」

「もう一つ聞いていい?なんで防衛軍なのに、戦慄とか、紅い幻魔団なんて…おどろおどろしい名称が付いているの?」
「わたくしも詳しくは、知らないんですが…」
 と、断りを入れてヨルムンガルドは話しはじめた。
「なんでも、敵を威圧する目的で【戦慄】ってワザワザつけているみたいですよ…【紅い幻魔団】ってのは、暗闇長官の趣味みたいですね」
 そのネーミングだと、敵以外に一般市民も威圧しているんじゃないかと…涼華は、思った。
「そ、そうなの…いろいろと教えてくれてありがとう」
 涼華がヨルムンガルドと、会話をしていると…今度は、巨大な犬型のロボットがノッソリと、格納庫に入ってきた。
 大きさは、ちょうどヨルムンガルドが普通の人間サイズだとすると、中型犬くらいの大きさだ。

「あっ、涼華さん…紹介します。この子は【フォンリル・γ〔ガンマ〕】わたくしたちの仲間です」
「そうっ、よろしくね…フォンリル」
 ロボット犬のフォンリルは、涼華に名前を呼ばれて嬉しそうに、尻尾を振った。

「これで、コア・ロボットの涼華さんを加えて、三体の戦闘ロボが揃いましたね…やっと、念願の変形・合体ができて、最終形態の超巨大ロボットになれます♪」

 今、涼華はヨルムンガルドの口から、聞き捨てならない言葉を聞いた。
「ち、ちょっと待って…今、なんて言ったの…変形とか合体とか…」

「アレ?暗闇長官、話していませんでした?わたしたちは、腕が取れたり頭が体の中に引っ込んだり変形して、合体するように設計されているんですよ…」
 涼華の頬がロボットながら、ピクッピクッと、痙攣した。
「聞いてないわよーっ!そんなの!!」


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