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【ロケットパンチを君の胸に♪】
【コメディ その他小説】

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【ロケットパンチを君の胸に♪】〔第一部・受難編〕-2

「わぁ♪いい眺め、お姉ちゃん…早く、早く!」
 高校生の鈴美は、元気いっぱいに先頭に立って山道を登っていった。
「いまから、そんなにハイペースで登ると、帰りが辛くなるわよ」
 額に浮かんだ汗を、手の甲で拭いながら、涼華は微笑む。

 平和なハイキングだった…地元の人が、なぜ【魔の山】と呼んで、恐れているのか…不思議なほど、のどかな風景だった。

「大丈夫だよ〜ん、あたしお姉ちゃんと違って若いんだもん」
 その時…一番後ろから登っていた龍彦が、ふいに足を止めて。
 なにかを気にするように…周辺を見回す仕草をしてみせた。
「どうしたの?」
 涼華が尋ねる。
「さっきから…鳥の声が聞こえないんだ…」
「えっ?」
 涼華が、そう言った…次の瞬間!!大地が揺れた。

ピキィィーン!!

 何か甲高い動物の声が、聞こえ…と、目前の小山が音をたてて崩れた。そして、巨大な二つの影が、もつれ合うように涼華たちの前に現れた。

「!?…」
 黒い二つの影は、間合いを取って対峙する。
「でっ、でっかいリス…?」
「ロ、ロボット?」
 現れたのは、巨大なリスと、二本の角を生やした黒いロボットだった。

ピキィィーン!!

 いきなり、リスが巨大ロボットに向かって火を吹いた。炎を鋼鉄の腕で防いだ、ロボットの角から電撃が…巨大リスに向かって飛ぶ。

 ピョンピョンと跳躍して攻撃を交す、リスは側面からロボットの腕に噛みつく…。

バキッ!ミシッ!!

 牙が食い込んだ腕から、黒いオイルが流れ、青白い火花が飛んだ。
 涼華たちは、目前で繰り広げられている出来事を…まるで、夢の世界でのコトのように呆然と眺めていた。
「あ…あれなに?」
 涼華が、かたわらに立つ、恋人の龍彦の手を不安そうに握り聞いた。
「火を吹く巨大リスと、黒いロボットが戦っている…んだ」
「そんなの見れば、わかるわよ…なんで、あんな物が…」
 ロボットは、喰らいつく巨大リスに全身から電流を放出する。
 リスは苦しみながらも、必死に巨大ロボットの腕に噛みついている。

「あの、ロボット…カッコイィ!いけぇ!」
 龍彦の弟の翔が、思わずロボットに向かって声援を送るのを見て、涼華の妹の鈴美は…少しムッとした表情を見せた。
「ちょっと!翔くん、どうしてあのロボットを応援するの…悪いロボットかも知れないよ」
「まさか、悪いのはリスの怪獣の方に決まっているじゃん」
「あらっ、そんなコト分からないじゃない…正義の怪獣かも知れないよ…いいもん、あたしはリスさんの方を応援しちゃうから…頑張って!リスさーん」

 翔と鈴美が、互いにロボットとリス怪獣を応援した。
 龍彦は、慌てて二人を停める…。
「やめないか、今はそんなコトより…ここから逃げないと…」
 龍彦が、そう言った次の瞬間だった…ロボット
が振り払った腕から、吹っ飛ばされたリス怪獣の巨体が、涼華たちの方に飛んできた。
ピキィィーン!!

 逃げる間も無かった…大気が揺れ、涼華たちは恐怖に絶叫した。
「きゃあぁぁ!!」
「うわぁぁ!!」
 近くの岩肌に、激突した衝撃で…涼華たちの足元が崩れ…四人は、沢底へと転がりながら落ちていった。
 幾度も岩肌に叩きつけられながら、斜面を転がり落ちていく涼華は、薄れる意識の中で…ロボットとリス怪獣が戦いを中断して、すまなそう声で。

『ごめんなさい…』
 と、言ったのを聞いた…涼華の回想が終わり、涼華は、プルプルと機械の体を震わせた。


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