性そして生命-4
『……めっちゃやらしい声や……ワシ……もう出そうやわ』
「………何…っ……?」
抗いきれない快楽に溺れていく慶子の絶望的な顔。
その背後から、ぬうっともう一人の男の姿が現れた。
髪が汗ばんでひどく乱れているせいでずいぶん違った印象に見えるが、その顔には見覚えがある。
「……た…高橋……部長……」
あの石原理可を長い間性奴隷にしていたという悪名高い元人事部長。
その性に対する病的なまでの執着は、社内でも知らない者はいないほど有名な男だ。
かなりの人数にのぼると言われる犠牲者が誰も被害届けを出さないのは、何者かによって強力な口封じがなされているからだという噂を聞いたことがある。
それが川瀬昭彦だとしたら―――。
三田村の身体に戦慄が走った。
ぞっとするほどいやらしげな笑いを浮かべながら、慶子の背後で腰を揺らす高橋。
信じ難いことだが、その動きから、高橋が慶子のアヌスに挿入しているらしいことが想像できた。
幼女のように華奢な身体が、二本の男根に貫かれながら、壊れた人形のようにガクガクと揺さぶられている。
「慶子……っ……慶子!!」
ズチュッズチュッ……という湿った音が幾重にも重なって部屋中に響き渡る。
『……あっ……あぁっ……この子のアナルむっちゃええわ……もう……イくでぇっ……!』
高橋が上擦った声を出しながら、腰を強く尻肉に叩きつけた。
『……ひぃっ……あぁっ……ああぁ!も…我慢……でき…ひんっ……いっ……イくうっ……イ……イくぅうっ!』
慶子が身体をビクビクと震わせながら奇妙なケモノのような声で絶叫する。
それに続いて川瀬が低い声で呻いた。
『……うっ…うぅっ…』
『……ああああぁっ……やああぁっ……イヤああぁっ!!中は…やめてぇっ』
その場面まできた時、強烈な吐き気が三田村を襲った。
想像を超えたおぞましすぎる現実に、身体が拒絶反応を起こしている。
「うっ……うぅっ…慶……子っ………」
胃袋はからっぽのはずなのに、次々と酸っぱい唾液が込み上げてくる。
たまらずトイレに駆け込み、大量の胃液を戻した。
「ぐっ……うぁぁっ………」
崩れ落ちるようにその場にへたりこみ、三田村は号泣した。
パソコンからはまだ川瀬の怒号と慶子の喘ぎ声が響き渡っていたが、これ以上はとても見られそうになかった。
「――――くっ……ひっく……ぐぅっ…慶子っ………慶子……っ……」
あいりの凌辱現場を見た時とは全く違う、激しい憎悪と嫌悪感が込み上げていた。
「美しい」などという感覚は微塵もなかった。
ただひたすらにおぞましく、直視することすらできない壮絶な現実がそこにあった。
三田村がずっと大切に守り抜いてきた、最愛の女性。
その神聖なまでに清らかな存在が、踏みにじられ破壊されてしまった。
「……なんでや……なんで慶子が……」
その理由は一つしか思い当たらなかった。
それは川瀬の三田村に対する「嫉妬」だったのだ。
「――慶子っ!慶……子ぉっ!!」
何度も大声で叫びながら、三田村は鳴咽した。
生まれて初めて、殺したいほど人を憎いと思った。