奥様の玩具1-1
昭和の1代前の大正の時代は15年間と短い時代だった。
その時代は戦いに明け暮れた明治の世も終わり大正デモクラシーの名の元に大衆は少し怠惰な毎日にどっぷりと浸かり明治の世では考えられない風情を楽しんでいた。
しかし少し郡部では、旧態のままに時間も世の仕組みも変わらず大地主と小作人とは君主に使える家来以下のものだった。
大地主は御主人で小作人はその地を去らぬ限り農奴同様の扱いを受けた。
そんな芦原村の大地主の芦原家に御寮様がお入りになり今日はこの近辺の大地主仲間へのお披露目の日であった。
日頃は芦原家の人々は東京に住んでおられた。
芦原の御主人が遣り手で芦原村で米の他に山の裾野を開拓させて桑の木を植えさせて養蚕業を始めその絹糸の工場まで造り海外との取引で莫大な資産を造り今は大地主どこか社長で資産家で1流企業の大株主だそうだ。
芦原の御主人はその頃御寮さんの冴子様を見初めて古女房を離縁して先日東京で政財界の大物列席のもと華燭の宴をされたらしい。
そして今日の日であった。
「章、奥様の足を洗ってやれ」
と御主人に言われて慌てて小盥に水を入れて玄関前の框に腰掛けて居られる奥様の足下に座った。
それまで章は呆然と奥様を見つめていた。
日頃日に焼けた黒い顔の女しか見ていない章には御寮様の透けるような白い顔や手が春先に芦原の家でお披露目されるお雛様の姫様のように見えて呆然としていた。
昼日中に諸肌脱ぎで汗を拭う村のお姉さんと同じ女とはとても思えなかった。
村のお姉さん達は田植えや刈り入れ時などはへいちゃらでモンペを脱ぎ捨て草むらで用たしをしていた。
犬猫並みのそんな姿は格別な事では当たり前で皆何とも思わなかった。
性の営みも夫婦ものや若い男や女は催せば木の陰で交尾をしていた。
章もそんな風に父母の間に生を受けたんだろう。
章には御寮様は別の生き物のように見えた。
その御寮様が章に足を差し出していた。
章は御寮様の足を押し頂くように手のひらに受けすべすべの足袋のコハゼを外して素足にしてゆっくり小盥の水に浸した。
水に浸す前に舌で舐めたいとなぜか思った。
足の指を丁寧に1本ずつ舐めとるように洗いながら口に含み舐めとらせて頂きたかった。
奥様の着物の併せ目からの何とも言えぬ仄かな匂いで章は男根がそそり立っているのを感じた。
「気持いいわ〜この方料亭のオナゴシさんより足の漱ぎ方がお上手ですわ、貴方」
御寮様が甘えるような声を出して言った。
御主人は御寮様にベッタリなのか
「章、お前は私達が帰るまでこの家に泊まり奥様に仕えるように」
と言われた。