三時の夕立『雷:止まない雫』-1
『雷:止まない雫』
最近の俺。
…感情の振り幅がデカくて、自分でも困ってる。
原因は、もちろんアイツだ。
片桐 亜紀子。
壊したくなったり、大事にしたかったり。
優しくできる日、心配する日、強引になる時、シカトしたくなる時。
アイツ、梅雨中にまた痩せたよな?
でも、話を向けても軽く流される。
なぁ、…なんかあったんだろ?
けど、心ん中で踏ん張ってるのが分かるから、情けなくも聞き出せない。
脅す側ではあるけれど、今の俺には…もう片桐を社会的に潰すことはできない。
脅してるフリすんのだけで、精一杯なくらいだ。
人を好きになるって、なんなんだろうな?
三池にでも聞いてみるか?
…はっ、我ながら苦笑いの出る考えだ。
あんな甘ったるいだけのイチャイチャしたカップルとは比べモンになんねぇ悩みだよな、俺のオンナは。
どうしたら、近親相姦を止めさせられるだろう?
アイツの親友の伊藤に言われた時は、ムダな足掻きと思ったが…やっぱり止めさせたくなった。
もちろん、伊藤に言われたからなんかじゃねぇけど。
そんな梅雨の合間にも、俺はついつい片桐に手を伸ばす。
明日は休み!って日のガッコでは、人目のつかない場所で、軽く煽ってやる。
そんで、片桐の息が上がって、ほおが紅潮するくらいで手放す。
で、その後の授業中にニヤニヤしながら見てやるのが面白ぇんだ。
「サク、待って…!
どこ行くの…?」
「ん?
あ、ここにしよ」
体育館の裏の、デカイ木に回り込む。
ぐっ、と肩をつかんで片桐を幹に張り付けて、くちびるを奪う。
むさぼりつくほど旨い。
「…っん!
…ん、んんっ…
ぁむっ、サク、こんなトコで…」
「よく言うよ、舌、しっかり絡ませてきたクセに」
片桐のくちびるは、唾液でつやつやぷるぷるになって、俺を誘っている。
口をふさげば声が抑えられる、という屁理屈の元、俺は再度キスをして、震える体に手を這わせた。
首、背、ケツ、ふともも、腹、胸…
だんだんと片桐のヒザがおぼつかなくなっていく。
片桐が自分から舌を差し出し、俺の体に胸や股間をこすりつけ始めた頃。
「…じゃ、また明日」
「…っ!!」
「ほら、教室戻るぞ」
背後で、片桐の"…ひどい!"という呟きが聞こえて、こっそり笑う。
もちろん、俺だって勃ってるし…ガマン汁滲んでんじゃねぇかって感じだけど、ここは抑えて。
片桐は教室に行く間に平常心を必死で取り戻し、身なりを整え取り繕う。
その澄ました顔と、たまに思い出すのか、俺を見やる恨みがましくも発情した目付きを楽しむんだ。
もちろんこんな事は、翌日にデー…おっと、ラブホに行けるって決まってる日にしかやらないけどな。
じゃないと、俺自身が辛抱できねぇし。