あばかれる闇-9
「辰巳……お前自分が何やってるか…わかってんのか……?」
「なんだよ……本人が望んでるんだから別にいいじゃねぇか!」
「望んでるわけないやろ……勝手なこと言うなや!」
「まあそう熱くなるなよ……」
辰巳のあしらうような口ぶりが三田村を強烈に苛立たせる。
「お前…ええ加減にせぇや……あいりちゃん離せ」
「うるせぇな……黙って見てろって」
手枷のせいで自由に抵抗出来ないあいりの身体を、辰巳がぐいと抱き寄せ、唇に吸い付いた。
「………んっ…んぐぅっ……」
ぬめぬめと可憐な唇をこじ開けるなめくじのような汚らしい辰巳の舌。
身をよじって抵抗するあいりの顔が、激しく苦痛に歪んでいる。
「嫌がってるやろ!……止めろって!」
辰巳につかみ掛かろうとする三田村を、川瀬が素早く遮り、両手を掴んだ。
「……主任……っ……あんた…藤本のことが……好きなんじゃないんですか?」
思わず口をついて出た言葉に、川瀬の片方の眉がピクリと痙攣するのがわかった。
「……意味が……わからないな」
「前から……感じてました――主任は………藤本に特別な感情を抱いてるんじゃないですか?……」
三田村の頭の中で様々な出来事が繋がっていく。
「黙れ……ガキに何がわかる……」
「……好きなら……なんでこんなひどい目にあわせるんです……」
「……黙れと言っているだろう」
「……あんた間違うてる……こんなことして……藤本が……あんたを好きになるわけないでしょう?」
「―――黙れ!」
突然、川瀬の靴の爪先が三田村の腹を力いっぱい蹴り上げ、あまりの激痛に三田村の身体はその場にぐらりと倒れた。
「―――三田村くん!」
あいりの悲鳴が耳鳴りのように響く。
「……うっ……ぐうっ……おま…ら……もう…やめ……」
うずくまったところを二人がかりで押さえつけられ、両手と両足を縛り上げられた。
そのままゴミのようにゴロリと床に転がされる。
「―――そんなに言うなら見せてやるよ……この女の本当の姿をな……」
川瀬の目にゾッとするような邪悪な光が宿ったような気がした。
END