肉体の取引 前編-8
「悩ましい声出して……案外感じてるんとちゃうか?」
慶子が苦しめば苦しむほど、高橋は楽しそうな顔になる。
「川瀬くんも手伝うてくれや。ワシ一人では食べきれへんで」
「そうですね。出来れば三田村にも食べさせてやりたいくらいですよ―――ねえ?慶子さん」
悪意に満ちた川瀬の言葉に、慶子はギュッと唇を噛んだ。
二人の唾液にまみれ卑猥な淫具と化した4本の箸。
その硬い異物が全身をつつき回すおぞましい感触に吐き気が込み上げてくる。
どうして三田村は、よりによってこんな男の婚約者などに手を出してしまったのだろう?
今更ながら、あの映像には何がトリックがあったのではないかとすら思えてくる。
高橋と酒を酌み交わしながら刺身を頬張る川瀬の卑猥な表情は、婚約者をレイプされて心から苦しんでいる人物にはとても見えなかった。
今自分がされていることは、本当に意味があるのだろうか………。
そんなことを悶々と考えているうちに身体の上に盛られた料理はだんだんと減り、もはや乳首の周辺と陰毛の辺りが隠れているだけになっていた。
「いよいよお楽しみやで」
高橋が乳房の先端に張り付いた刺身をぺろりと剥がすと、乳輪の一部があらわになった。
「おぉ。見えてきたで」
露出した部分に二人の視線が集中し、ねっとりと絡み付くのがわかる。
「どれ――では私も一枚……」
高橋に続いて川瀬もすぐそばの刺身をつまみ上げる。
卑猥な下着をゆっくりと切り裂かれていくような恥ずかしさに、慶子は思わずギュッと目をつむった。
これ以上食べ進められたら恥ずかしい部分があらわになってしまう………。
しかし全てがあらわにならなければ、この恥辱の儀式は終わらないのだ。
狂おしいほどのジレンマの中、慶子は泣き叫びたいほどの羞恥に必死で耐えていた。
あと少し我慢すれば三田村を救うことが出来る。
何も見ないように、じっと目を閉じていれば最後まできっと頑張れる………。
高橋の箸先が、ついに乳首の中心をまさぐり始めた。
ゾワッと鳥肌が立つほどの不快感が込み上げる。
慶子は今まで以上に唇をきつくひき結び、懸命に意識をそらそうとした。
「どれ……こういう清純そうな娘さんのは……どんな形やろな……ひっひっひ……」
高橋の箸が最後の刺身をパッとめくると、ピンクの乳首がぴょこんと顔をのぞかせた。
寒さと緊張のせいか、微かに立ち上がってしまっているのがたまらなく恥ずかしい。
「川瀬くん見てみい。貝柱が立っとるわ」
高橋の箸先が根元をぐいっとつまみ上げると、その部分にキリキリとした痛みが走る。
「……や…やめてっ……」
「コリコリして旨そうや」
「やっ……いや……あぁっ……お願い……」
「―――そんなやらしい声出されたら我慢できへんわ」
高橋はそう言うと、慶子の身体の上に覆いかぶさるように身を乗り出し、いきなり桃色の乳首にむしゃぶりついてきた。
「あっ……いやあっ!」
乳頭にベロベロとまとわり付く不気味な舌の感触。
盛られた料理を食べられるだけだと思っていた慶子は、想定外の展開に激しく狼狽した。
「――やめてっ!」
慶子の叫び声に高橋が顔をあげる。
「なんやねん。やかましい女やな」
「……あ…あのっ……お料理を……ふ…普通に食べるだけにしてもらえませんか……」
「食べてるだけや。『普通に』な……」
高橋は慶子をおちょくるように言い返しながら、唾液にまみれた薄汚い唇で、更に深く乳首をくわえ込む。