罰ゲーム 後編-9
「ああっ!あああっ!イ…ヤ……主任っ……主任っ……」
自分でも予測していなかった強烈な快楽の波があいりに襲い掛かり、喘ぎ声が急にワントーン高くなる。
「…………イけよ……ホラ」
川瀬がとどめとばかりに、さっきのバイブレーターをあいりのクリトリスに押し当ててきた。
ビィ―――ンという音と共に、激しく振動する触手が、あいりの敏感な部分に容赦なく襲い掛かる。
「あああっ!イ……イくうっ……あ…イ…イっちゃうぅっ!……あっ……あっあっ……ああああっ!」
絶叫のような喘ぎ声とともにあいりの身体が大きく痙攣し、川瀬の青臭い精液が肌の上に飛び散った。
―――――――――――
身体の節々と頭が割れるように痛んで、身体を起こす気力もない。
そして何より、三田村に軽蔑されたという深い絶望感があいりの頭を支配していた。
――彼はいつ帰ったのだろう?
罰ゲームが始まる前だろうか?
それとも……途中までは凌辱に参加していたのだろうか……?
いや……いずれにせよ―――彼はあいりを見捨てたのだ。
例え恋愛感情がなかったとしても、三田村がこんな状況の中、あいりを一人で残して帰ってしまうことは、普通ならばありえないと思う。
三田村はそういう男だ。
しかし、今現に三田村の姿はない。
その疑う余地のない事実が、あいりの胸を切なく締め上げていた。
『……もう…片思いすることすら……許されないのかな……』
そう考えた途端、涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。
『……馬鹿ね……そんな簡単に諦められる相手ならば、もうとっくに諦めている――――』
勝ち誇った顔で自分を見下ろしている川瀬から顔をそむけて唇を噛んだ時、不意に入り口のドアが開いた。
「―――ちょっとぉ。川瀬主任が来てるんならあたしも仲間に入れてよぉ。その子ばっかりずるいじゃなぁい」
まだアルコールの残る赤ら顔でフラフラと部屋に入って来たのは、王様ゲームの途中で三田村とともに席を外していた高野直美だった。
いつ着替えたのか、なまめかしいバスローブ姿になっている。
豊満な乳房が襟元からはみ出しそうなその姿にあいりはドキリとしたが、坂田会では当たり前の光景なのか、男たちは皆平然としている。
「なんだよ直美、お前先にシャワー浴びたの?」
坂田が馴れ馴れしく直美の腰を抱き寄せ、胸元に手を差し入れる。
「バカだなぁ。今からどうせ汗だくになるのに」
卑猥な笑いを浮かべながら上野が言うと、直美はペロリと舌を出しながら上目使いでこう言った。
「だってぇ。三田村くんが意外に激しくってさぁ。中に出しちゃったんだもん」
『――――何?
今……なんて言ったの?』
信じ難いその言葉に、あいりは一瞬耳を疑った。
「何?お前もう三田村とヤってたの?アイツちゃっかりしてんなぁ」
呆れたような上野のつっこみにも、直美は何の恥じらいも感じていないようなあっけらかんとした顔をしている。
「……んふ。トイレの帰りに試しに誘ったら案外その気だったから、ノリでヤっちゃったの」
『――嘘――』
直美のことはそんなにも簡単に抱いたのに、あいりを抱くことを拒んで帰った三田村………。
その悲しい事実は、あいりを今まででもっとも深く失望させた。
『どうして………私は……ダメだったんだろう……』
いくら考えても、三田村の本心はわからなかった。
狂おしいほどの快楽を感じたセックス―――。
三田村だと思っていた相手は、実は川瀬だった。
ならば……あの瞬間に本能的に感じた愛情や安らぎは何だったのだろう。
自分が本当に求めているものが何なのか――――あいりの心は激しく混乱していた。
END