非線型蒲公英 =Fortsetzung zwei=-2
翌日、テスト全科目終了。
「テスト…か…何だか、今となっては全てが懐かしい」
俺は、テスト終了と同時に、教室を飛び出して屋上に来ていた。理由はもちろんテストの話題を振られるのが嫌だったから…ってのもあるが、もう一つ、ひよちゃんがいると思ったからだ。
「でも、いないし…」
正直、ひよちゃんの事ばかり考えていて、今日はテストどころではなかった(まあ、テストに集中していたとしても結果はそう変わらなかったと思うが)。
「ああ、そう言えば、まだ返事とか言ってないし…駄目だ…俺」
「…先輩、何してるんです、こんな所で」
「うぎゃああああああっ!! うわあ!! ひ、ひよちゃん!?」
いきなりは心臓に悪い…。
「…化け物でも見たような反応ですね」
すっと、冷たい眼で睨まれる。
「ち、ちがっ、ひよちゃんの事考えてたら、いきなり本物に話しかけられたから驚いただけで…」
俺がそう言うと、ひよちゃんは急に俯いてしまう。
「…そ、そうですか…」
暫くの沈黙。こそばゆい…。
「あ、ひよちゃん…昨日の…さ」
「…本心、ですよ」
「ああ、うん…それでさ、俺…」
「…先輩がどう思っていても、私の気持ちは変わらないですから…」
「ち、違う、俺だって、ひよちゃんの事…」
数分前。屋上、入り口上の給水タンク横。
「なあ、カナ…あれは、遊佐間だろうか」
「あー、ホントだー。何してるんだろ」
美咲と香奈の二人は、やはりテスト終了と同時に屋上に来ていたのだった(しかも聡よりも先に)。
今期の新刊のネタを作るために、屋上から双眼鏡で見える範囲の部活動(もちろん男子)を観察していたのだった。
で、屋上に誰かが来た…と思ったら、聡だった、という訳だ。
「何やらブツブツと呟いているな…男日照り過ぎて、気を病んでいるのだろうか?」
「ふふふふふー、アレは恋の悩みというやつですなー」
「ん、という事は、逆に男に恵まれすぎて…?」
「もーっ、美咲ちゃんってば、最近無理やりにでもそっちに持って行きたがるねー。確かに、今はそういうネタを求めている最中だから仕方ないけどー…さとっちのは、そういうのじゃ無いんじゃないかなぁ」
香奈は、ニヤリといやらしく微笑んで言う。
「では…遊佐間は…ん? 今度は…宍戸か?」
妃依が屋上に現れた事に気が付く。妃依は聡に近づいていくようだった。
「やっぱりそうかー…美咲ちゃん、コレはネタに出来るかもしれないよー? くふふふふふ…」
「ネタ…ふむ、確かに興味深くはある…なっ!? あ、アレは…!!」
ふと、聡達とは別の方、武道場に眼をやった美咲は、(彼女達にとっては)とんでもないものを見つけてしまった。
「か、カナ!! 大変だ!! 柔道部が練習をしているのが見える!!」
普段ならば閉まっているはずの武道場の扉が、今日は気温が高いからか、全開になっていた。
「えっ嘘!! きゃああああ!! ホントだー!! 美咲ちゃん、カメラ、カメラ!!」
「りょ、了解した!! クッ、こんなことならばビデオを用意しておくのだったッ!!」
後悔しながらも、手はシャッターを切る。
「あああー!! 寝技!! 寝技は確実に撮ってね!?」
「解っているッ!! …いいぞ!! ネタが湧いてきたッ!!」